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 大阪ガンナーズファン感謝祭



(大阪ガンナーズ CP無し話。)

青空、その下に人、人、人。ガヤガヤとした中で笑い声が響く。
良く焼かれた黒い鉄板にはボコボコ窪みがあり油をひかれその出番をいまかいまかと待ちわびている。
大きなボールには刻まれたネギが山のように積まれており、同様に紅ショウガ、天かす、その他沢山の材料がででんと構えている。

今日は大阪ガンナーズファン感謝祭である。

「なんや、ぎょうさん人着てんなー!おおきに!!
今から焼いてくさかい、ちょう待っててな めっちゃ上手いの作ったるわ!!」
誰の耳にも届く威勢のいい声を上げたのは畑。
練習着の上に赤いエプロン、バンダナを三角巾にしておりボコボコした穴に
とろりとした卵色の生地を流し込んでいる。
「ちゃんとできんのかー? 畑。」
「だまって見とれ片山!」
「手ぇ動かせや、ほらこっち火入ってきてるやないか、はよ具入れんと!」
「うっさいわ!お前!! そんな言うならお前やらんかい。」
「ほな、やったるわ! もうちょう奥行けお前!!」
畑同様練習着の上に青いエプロンをつけた片山も参戦した。

「あー、やっぱこんな時もうるせぇなFWコンビ」
ぶつ切りタコが入ったボールを抱えた平賀がため息と共につぶやいた。
もはや慣れてはいるが、こう暑い日に熱苦しいやりとりを見るのは心がだれる。
置いとくぞ、と声をかけて机に置くと突き刺さるような視線の元に目を合わせた。
「どうした? ハウアー」

『あれ、食べるの・・!? たべものじゃないよ、タコだよ!タコ!!』
やや顔を青ぞめながら、先ほど平賀が持っていたボールをおそるおそる指差す。
『あの丸いぶつぶつ、ぬらりとした表面。グロイ、エグイ、今すぐ捨てよう!』
「すまん、ソノダさんに言ってくれ。 俺じゃわからん」
片手で、すまんと形ずくると、ハウワーは察したようだ。
近くにいた窪田に救援を頼んだ!


そんな窪田はと言うと、奇麗に丸く形づいてきたタコ焼きを食い入るように見ていた。
ハウアーの必至の訴えも、「あ、はい多分・・?」でさらりと流してしまっている。
窪田にとってタコ焼きと言えば祭りやお店で食べるものであり、こうして自分達で作れる事に妙に感心していた。

「わはっ、凄いなあ、本当に丸くなってる」
「当たり前やろ窪田、俺を誰や思ってんねん!関西人ならだれでもできるで」
「片山でも出来るんや、お前もやってみるか?」
「え、・・あ、はい。」
「どういう意味やコラ!てか、おまえもどこのおばちゃんや、白いかっぽう着に三角巾なんて、調理実習ちゃうねんぞ!」

つっこまれながらも楽しそうな窪田がタコを遠慮無く入れ、ハウアーの心を殴りつけた。
裏切られた! そう感じたのだろう。
ふるり、衝撃に体を震わしたハウアーはガッっとタコの入ったボールを掴むと
脱兎の勢いで逃げた。

「「おまっ 何すんじゃぁああ ハウアー!!!」」

目の前の机に邪魔されて動けない3人がとった行動は様々だ。
窪田はハウアーをおっかけた。
片山は焼けた物を容器に移すとソースと青のり、鰹節、マヨネーズをかけてファンに手渡していった。サポーターに囲まれつつも楽しそうにしている。タコが戻って来るまではファンサービスに務めるようだ。
畑はというと、再度生地を注いでいる。
先ほどと同様に、ネギ、紅ショウガ、天かすを入れると、なにか四角い物を入れた。

「畑、いま何入れたん?」
一部始終を見ていたサポーターがつっこんだ。
「こんにゃく、甘辛く炊いといてもろてん、うまいで」
「畑、こんにゃくいれたんか! あかん、それはあかん。噛んだ時のがっかり感をしらんのか!」
片山からツッコミがきた、良く見ているものだ。

「だったら、これも入れてよ」
志村が持ってきたのは、赤かった。
「志村さん、キムチは無いわ!」
「大丈夫、だいたい一緒だよ。」
「何といっしょなんや志村さん!!」
片山と畑につっこまれても少しも動じる様子は無い、
それどころかチーズの入った容器を見せて、これもとお願いしている。

余談だが、志村は先日お好み焼きを食べた。
そこで食べたキムチ+チーズのトッピングが美味しかったらしい。

あの後、窪田に追いかけられたハウアーは最後の砦!といったように
ダルファー監督とソノダの元に急いだ。
オランダ人のダルファー監督なら自分の感覚を分かってくれるだろうし、
それをソノダが伝えてくれる事に希望を見出したのだ。

しかしそうはならなかった。
既に美味しそうにダルファー監督がタコ焼きを食べていたのである。
「大丈夫ですか? ダルファー監督の御国では召し上がらない食品だと思いますが」
「うん、おいしいよソノダ君! 確かに僕の国では食べないけどね、
君が美味しいというなら食べないはずないじゃないか! 君の国を知る良いきっかけだよ」
「お・・お優しい! なんと僕は幸運なんだ、こんな懐の深い素敵な監督の通訳になれるなんて!」
「ふふ、やめてよソノダ君 照れるじゃないか。」
夫婦漫才のような二人のノリにハウアーは完全なる敗北を悟った。

すごいな畑さんと片山さん。二人ともここまで離れても声が聞こえる。
ハウアーからタコをとりかえした窪田がのろのろと歩きながら戻ってきた。
監督も、選手も、サポーターもみんな楽しそうだ。
もし、サッカーが無ければこうして知りあう事も無かったのかと思うと一層愛しく感じる。
サッカーっていいなあ、やりたくなってきた。
もうすぐ、中断期間も終わる。またあの楽しい時間がやってくるのだ。
ひゅううと勢いある風が通り抜ける、走った後のからだには気持ちいい。
ふと、こんな風みたいな選手を思い出した。
(リベンジ、しなくちゃ。)

「わは。」
「窪田、はよタコ持って来い! このままじゃゲテモノ焼きだらけになってまう!!」

大慌てする片山に呼ばれ、窪田は走っていった。
心は既にスタジアムまで向かっている。





想像以上に長くなりました。
大好きです大阪ガンナーズ、CPあるなしどっちも好き。
こちらも増えてほしいなあ。





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