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 止まり木願望



「おかえりなさい」
クラブハウス、ドアの前で椿は笑顔で部屋の主を出迎えた。
出迎えられた部屋の主こと達海は少し目をしぱしぱ瞬かした後笑顔で恋人を招き入れた。

ベッドに腰をおろして気になっていた事をぶつける。

「どうでした?オールスターゲーム」

自分で言いながらきっと盛り上がって楽しかったろうなと予想できる。
夏木さんはきっとこういう試合好きそうだから盛り上げてくれるだろうし、反対に王子はきっと相変わらずだろう。面白かったよ。と言う監督から今日の試合の内容を教えてもらった。同い年なのにオールスターに選ばれた窪田は凄いなとか、もし参加できたのなら古内選手といっしょにサッカーできていたのか!出たかった!とかたわいもない話をしながらふと、別の事が頭に引っかかる。

なんか、もやもやする。監督の話は凄く面白いし、話す監督も楽しそうだ。
試合も3−1で日本選手が勝利したし、何も悪い事なんて無いはずだ。
なのになぜか俺は焦って、もどかしくてじれったい気持ちがふつふつ湧いている。
モンテビア山形の監督の話も面白いし、サックラーというあだ名は王子が付けたかと思ってヒヤリとしたけど(あの人ならやりそうで怖い。)楽しいのに、苦しい。
気づいたら監督の顔ばかり見ていた。

「椿 どうした?」

どうしたはこちらが言いたいです。
自分でもわからないのだから。
応えられないでいると、窓側に座っていた監督が降りてきて隣に座った。
結局何も言葉が見つからなくて傍にあった監督の肩に頭を預ける。

「めずらしい、お前から甘えてくるなんて。」
「・・・・・・。」
「あと2,3年もしたらお前も呼ばれるよ、オールスター」
気になるのはそこじゃないんっすよ、ただ、今日の貴方が・・

「椿? 本当にどうした。」
「達海、さん。 元気ですか?」
「うん?」
「うまく言えないっすけど、なんか違くて・・・。 」

不敵に笑う所とか、のんびりしたしゃべり方とか、ひょうひょうとした表情とか、
いつも見かけるのにどこか不自然で・・・。

「・・・意外とするどいね 椿。」

眉を少しよせて、監督がわらう。
ああ!これだ。
なぜか、笑いながら泣いているように感じて、ぎゅうぎゅう胸が痛かったんだ。

「疲れました?」
「うん、くたくた。」
「大変でしたね。」

頭を戻そうとしたら、監督の手の感触。
ああ、寂しいのか。
なんとなくそう感じて腕をまわして監督を抱きしめる。
そしてそのままゆっくりベッドにもたれた。

中断期間中のクラブハウスはとても静かで、俺も監督も喋らないでいると時計の音が凄く耳に響いた。ちっちっちっちっ、という音を聞き流しながらすこし冷たい体温を持つこの人を感じる。

「つばき」
「はい」
「明日練習無いし」
「はい」
「今日はきっとお前を気持ち良くさせてあげられないと思う」
「はい」
「それでも・・・・」
「いいです、 抱いて下さい達海さん」

泣きそうな顔して貴方が笑うもんだから、俺も釣られて泣きそうになる。
何がこの人を追い詰めたのか俺にはわからない。
励ますなんて出来そうにもない。
ただ、すこしでも気が楽になればいい。
そのためならば俺の体くらい好きにしたらいい。
そう思って達海さんの手のひらに唇を押しつけた。




持田の膝を知って昔を思い出した達海。
椿は落ち込んでるとは気付かないけど違和感は感じるよ。
さて、続きは確実にえちい話になります。 大丈夫な方だけどうぞ。






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