願うのは、ただ一つ。

幸村くんに一度だけ前に、貰うとしたら何が欲しい?と聞いたことがあった。その時、幸村くんは俺に聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で“丈夫な体”かな…と言った。それを聞いた瞬間に体が固まった。そんな俺を見てから、幸村くんは冗談だよ、ブン太と儚げに笑った。冗談になんて聞こえるはずもなかった。ああ、なんで俺はこんなにも無力なんだろう。

「ブーンー太」
「うえっ」

ずしっと背中に衝撃。ちらりと目を横にやれば、ウェーブのかかった蒼色の髪が見えた。幸村くんか。まあ、声で分かったけどよ。

「なに、幸村くん」
「なんでもないよ?」

くすりと笑い首を少しだけ傾げる幸村くん。なんか、同じ男だと思わないんだよなあ。綺麗すぎるってかんじだからか。あ、

「なあ、幸村くん」

何を思ったかわからないけど、俺はさっき考えていたことをもう一度聞いてみることにした。俺の髪の毛で遊ぶ幸村くんに。

「なんだい」
「貰うとしたら、何が欲しい?」

そう告げれば、幸村くんはピタリと動かしていた手を止めて目を細めて此方を見てきた。「…二回目だね、ブン太」そう言って。けど、俺は何も返すことは出来なかった。また、幸村くんに“丈夫な体”って言われたらどうしたらいいのかを考えるだけで精一杯だったから。

「んー、そうだな…優勝旗かな」
「へ」
「まあ、欲しいっていっても赤也が来年取ってくれるからなあ…」

だったら、今は別に欲しいものとか無いんだよなとぼやく幸村くん。ホッとしたような、なんというか…優勝旗か、まあそっちのが断然叶えれそうだけど、もちろん…赤也がな!

「うしっ、幸村くん!練習しよ!」
「そうだね」

ふふと幸村くんが笑ったら、風が蒼色の髪を靡かせた。そして、俺は幸村くんの手を引っ張って小走りした。後ろで、ブン太速いよっていう幸村くんの声を聞きながら。

(幸村くん、誕生日おめでとう!)

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