ああ、かわええ

っち、と軽い舌打ちが聞こえた。自分に対してかと思い財前の方に目をやり目が合えば財前は慌てた様子を見せて、部長やないですとはっきり言った。せやったら、何で舌打ちしたんやろか。

「財前、どうしたん」
「…前髪が伸びてきて鬱陶しかったんっすわ」

そう言い黒い前髪を触る財前に、さよかと返して財前が言うように果たしてそんなに前髪が伸びたのかと思いじっと見つめてみた。ああ、確かに少しだけ伸びとる気もするわ。

「ぶ、ちょう」
「んー?」
「そんな見んでください」

前髪を弄るのを止め、目を違う方向へとやる財前。そんな財前の顔は紅い。ほんま、かわええ。

「あかん?」

財前の前髪へと手を伸ばし触ると、肩を大きく揺らして目をいっぱいに見開き俺のことを見てくる。そして、小さな声で、あかんくわないですと呟いた。そんな財前に顔がつい緩んでしまうのが分かる。ああ、なんでこの後輩はこんなにも可愛いんだろう。

(部長、いい加減にっ…!)
(んー?いやや)
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