昔はね、

※大学生辺り

「実は、俺征ちゃんのことキライだったんだわ」と無意識の内にそう漏らせば、ぱちくり、そんな音を立てて征ちゃんは数回瞼を閉じたり開いたりした。驚いた?ま、とーぜんか。当然だよな。

「…へえ、初耳だ」
「ま、言ってねぇしな」

にぱっと笑えば、くすりと小さく征ちゃんが笑った。あ、かわいい。にしても、せっかくの休日にのんびりしていた時になぜさっきの言葉を言ってしまったのか、それはまあ征ちゃんのこと考えてたからなんだけど…。

「でも急にどうしたんだい?」
「いや、なんか征ちゃんのこと考えてたら、そういや俺はいつから征ちゃんが好きなんだろって思ってさ」
「それで最初はキライだったって?」

じー、と猫みたいなつり目がこちらを見つめる。ま、猫みたいなのは目だけじゃねぇな…性格とかうん、まあいろいろと。あ、寝るときもまんまるくなって寝んだよな征ちゃんってば。

「そういうこと!…ほらあれ試合したときとかの印象すげぇ悪かったし」
「悪かったのか」
「え、良いと思ってたの!?」

俺がびっくりして声を上げれば、ふはっ、と征ちゃんが笑う。いや、ふはっってなんなの。可愛すぎでしょ。

「まさか、ふふっ、悪い印象だとは思ってたさ」
「うわあ、焦った」
「なら、今はどうなんだい?」

にっこり、と高校時代では見られなかった笑顔が俺に向けられた。なんか、まったく高校時代の面影がねぇ。なんだ、丸くなったっての?わかんねぇけど…。

「んー、大好きかな」
「ふうん、そうなのか」
「ってのは嘘で、」

大好きと伝えれば不満そうなので、俺はにやりとした笑みを浮かべ口許を吊り上げれば、征ちゃんは…嘘で?と俺の言葉をリピートしてきょとんとした表情でこちらを見てきた。

「愛しちゃってるんだよな」

征ちゃんの瞳をじーっと見ながらそう告げれば、頬っぺたを赤くさせた。そして、馬鹿と言われて手元にあったクッションを投げつけられた。…つぅ、クリーンヒットだぜ、征ちゃん。…へへっ、ま!その後にぼそっと小さく、『僕もだよ』なーんて言ってくれたから俺のテンションはヒートアップ!だから責任とってくれるよね、征ちゃん!

(あ い し て る)
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