孕んでしまえ

ベッドのシーツと体が擦れる音と口から漏れる声、そして行為の音だけが部屋の中を支配していたが、その行為も終わり息を整えるための荒い息だけが耳に聞こえる。暫くすれば、荒い息をする声も聞こえなくなる。それを合図に、自分とは反対側にいる光を自身の顔を横に向けて見れば、男にしては小さくて細い自身の手をお腹に置き、愛しそうに撫でていた。まるで、我が子をお腹に持つ母親に似たような顔つきだった。

「こんなたっぷり中に出されとるのに、なんで孕まないんやろ」
「…そら、男やし」
「男やって妊娠したらええのに」

そう言って光は、自分の中に出された精液がアナルから垂れて出てきているのを指で掬いとり、その指を熱っぽい目で何秒か見つめた後真っ赤な舌をちろりと出して、精液を味わうように舐め上げる。その姿に酷く興奮してしまい、再び自身が熱を帯びるのを感じるが必死に抑え込む。そして、気分を紛らわせようと光に話しかけた。

「なんで、そんな妊娠したいん」

そう問えば、精液を舐め上げた光は舌を指から離して目をこちらに向けて口を開く。

「赤ちゃんできたら、謙也さんのこと縛れますやん」

しっかりとした口調で言われた。その途端、無性に悲しさが込み上げてくる。あかん、涙でてきそうや。…あーっくそ、光に対してなんか言いたいんやけど、言葉が出てこん。口が達者やったら、ぽんぽん湧いてくるやろうにな、せやけどこいつに何か今してやりたい。少しでも、赤ちゃんがどうとか思わなくてもよくしてやりたいと思った、やからオレは光の頬を撫でてやる。その行動に光は大人しく瞼を閉じて猫のようにすりすりと手にほお擦りしてきた。

また、オレは哀しくなった。

(オレ達の間に、赤ちゃんができることは一生ない)
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