タイセツナアオイロノキミ

たらり、と出てきた汗が頬や背中を伝う。すっかり夏が終わったのに暑さを感じてしまう。去年の今頃も果たしてそうだったのだろうか?と考えてみたりするが毎年きっと同じことを考えている。人間とはそういう生き物だ。「暑いな」と呟けば、隣にいた蓮二が「暦上では秋だが確かに暑いな」と返してきた。それに相槌を打とうとすれば、再び蓮二が口を開く素振りを見せたため口を開くことを止める。しばらくすれば、「そうだな精市、ベンチに座って休憩したほうがいいだろう」と言ってきた。聞いた瞬間にはあ、と溜息が出た。全く、まだ俺のことを病人扱いをする。決して心配されるのが嫌なわけじゃない。仮にも俺は、部長だ。部員も汗を流している中で部長がベンチに座って休憩するなど考えられない。「精市」…黙っていれば咎めるように、名前を呼ばれる。いやだな、そんな心配された表情で見られたら納得するしかないじゃないか。「わかったよ」少し肩からずれかけていたジャージを直して、ベンチに向かった。ベンチに向かえば、柳生が立っていた。「どうしたんだい」わかっていても問う。「幸村くんと柳くんの会話が聞こえてしまいまして」柳生は、苦笑いしながら手にしていた折りたたみ傘を見せてきた。ふふ、とつい笑ってしまい、さすが紳士だなと思う。「ありがとう」といえば、柳生は照れたように笑っていそいそとベンチに折りたたみ傘を取り付けていた。取り付けが終わったと同時にベンチに座れば、真田が歩いてくるのを見つけ、次はなんだろうな、と子供の様にウキウキしていた。「幸村」到底中学生とは思えない低い良い声で呼ばれたので、「なんだい」と返せば「体調が優れないの、か」といつもの鬼のような形相とは考えられない表情で言われた。真田にまでこんな表情をさせてしまっているのかと悲しくなって「大丈夫だよ、心配かけてすまない」と微笑んだ。真田は、うむとか言って佇んでいた。座ればいいのにな、と物思いにふけっていると真田の後ろに赤髪や銀髪やスキンヘッド、もじゃもじゃの髪が見えた。ブン太に仁王、ジャッカル、赤也だ。必死にこちらへと向かって走っているのがわかり嬉しくなった。つい、涙が滲んでしまいそれを指で拭いながらクスクスと笑えば風が吹き抜けて俺の蒼色の髪を揺らした。

こんなことしかいえないけど、『ありがとう』。

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