肌寒くなってきました

涼しいけれど、どこか少し寒い風が吹く。肌寒いとでもいうのだろうか、そう思ったりしてカッターシャツから五分ぐらい覗く腕を擦る。

「光、これ着とき」

それを見ていたのか謙也さんが、鞄からカーディガンを取り出して俺に渡してきた。そして疑問を抱いたため、相手に投げ掛けてみることにした。

「なんで、カーディガン持っとんっすか」
「今日寒いかなって思うたからな」

謙也さんの答えにそっすか、とどうでもいいように返事を返すがさらに質問を投げ掛ける。

「…謙也さん珍しいっすね、カーディガンとか」
「っ、ええやん!」
「あんた、セーター派やのに」

うっ、などと言葉に詰まった謙也さんを見て勝ち誇った顔をつい浮かべてしまう。そないにしても、俺にはあんたの考えとることなんか全て御見通しやで。なんで、セーター派なのにカーディガン持っとるのか。しかも、

「しかも色が薄いピンクとか、乙女でも目指してるんです?」
「それは、その」

そう謙也さんから渡されたカーディガンは、女子が好むような薄いピンク色をしたものやった。

「これって俺のためにでも買ったんっすか?」

リュックを謙也さんに押し付けて、カーディガンの袖に腕を通しながら再び投げ掛ける。

「へっ、なななんでわかるん!?」
「…俺がピンクのカーディガン欲しいなっていいましたやん」
「自分の言葉は覚えとるか、…サプライズ的なことしたかったっちゅーのにな」

はあ、と溜息を零す謙也さんを尻目にカーディガンを見る。ああ、やっぱ薄いピンク色ええわと感じる。今年の冬はこれで乗り切るか、などと思いながら尻目にしていた謙也さんに声をかけることにした。ってか、どんだけ凹んでんねん。溜息着きすぎやろ。

「謙也さん、」
「ん」
「おおきに」

あまり謙也さんにお礼を言うことはないため、少しばかり恥ずかしかった。いや、かなり恥ずかしかったから目をちらっと見て言った。そしたら、謙也さんが顔をこんなにかっていうぐらい赤くして固まった。意味わからん。

(ずきゅーん!忍足謙也に1000のダメージ!)
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