未来を考えるのはまだはやい

チョーク…と目の前にいる若は俺と手を繋いでいる部分を見ながらそうしっかり言った。チョークといえば、学校とかにある黒板に字や絵をかくために用いる文房具だ。白墨ともいうみてぇだがな。

「チョークがどうした」
「…消せれていいですよね」

あーん?どう意味だ、と日吉の答えに直ぐ様返した。日吉が言いたいことがわからねぇ、なんでまたチョークなんか話題を出して、それが消せれていいですよねなんかにいたるんだ。

「無かったことにできるじゃないですか、そしたら…オレと跡部さんの関係も何も無かったように出来ますし」
「…日吉」

独り言を呟くように言う日吉の手がカタカタと小刻みに震える。きっと、こいつは俺が跡部財閥の後継者だということを気にしているのだろう。将来はどこかの令嬢と結婚して家庭を築くこの俺のことを。そして、付き合う前からわかっていたことだったけど、今更痛感したということか。ありえねぇな。

「日吉聞け」
「…なんですか」
「この俺がお前を手放すとでも思ってんのか?んなこと、ありえねぇってお前が一番わかってる筈だ」

そう言いながら繋いだ手に力を強く入れ、もっと強く繋いだ。それにピクリと肩を少しだけ動かし、日吉は口を開いた。

「そうですね」

そう言った日吉は、悲しくかつ嬉しそうに微笑んだ。

(誰にもこの関係を壊せはしない)

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