いつか力に…

今日も雨みたいだね、隣にいる幸村がそう言った。それに、うむと返せば鋭い目でこちらを見てきた。何事だ?

「真田、晴れにしてよ」
「…自然現象だから諦めろ」

そうだけどさー、こうも雨が続くと俺の士気も下がると小さく呟やく幸村に軽く低い溜め息が出た。

「いま、溜め息ついただろ。こっちが溜め息つきたいよ、折角退院したのにさテニスが出来ないなんて」
「幸村…」

悲しい表情を見せる幸村に、胸が痛む。こいつにしかわからない痛みは、到底オレがわかることはないだろう。だから、とても歯痒いしもどかしい。

「なーんてね!真田そんな顔しないで、てるてる坊主作るよ」

一人真剣に考えていれば、それをぶち壊す幸村にオレは救われた。今のオレには、こいつをわかってあげるための力など無いからだ。

「うむ、てるてる坊主とやらを作るぞ幸村」

そしてそれを決して悟られないように、明るい声で返した。お前の力に慣れない未熟者のオレを許してくれ、幸村…。

(強く唇を噛み締めた)
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