欲情して、くちづけ

獲物を今か今かと狙うような目つきをしている大輝の視線が気になってしまう。今は、放課後の教室でテストが近いために大輝に勉強を教えている真っ最中だ。

「大輝、僕に目をやるんじゃなくてこっちに目をやれ」

そう言って、教科書とテキストを軽く指の先でつつく。だが、大輝がそんなことを気にするわけもなく僕に目を向け続ける。視線とは不愉快なものだ、特に見られ続ける視線は尚更。はあ、と小さく溜め息を溢せば赤司と僕を呼ぶ声がする。勿論、その声は大輝以外にいない。

「なんだ」
「面貸せ」

カシャン、大輝の言葉を聞いたと共に持っていたシャーペンを落とした。なにをいうかと思えば…まったく何がどういうわけでそんなことを言ったのか。理解し難い。

「どこのヤンキーだ、お前ってやつは…」
「わりぃ、わりぃ間違えた」

心から謝罪するわけもなく棒読みに謝罪する大輝。それから、口貸せと続けた。口貸せってなんだ?意味がわからないと思い再度大輝に文句ではないがそれらしきものをぶつけてみようと思ったのも束の間、口が塞がれた。大輝の口によって。

「んっ、んん」

自分の漏れる声に恥ずかしくなりながら、なんとか隙間から酸素を得ようと口を開けば、待ってましたとばかりに大輝の舌が入ってきた。そして、そのまま僕の歯をなぞったり舌を絡めとったり、しゃぶったりさまざまなことをしてくる。

「だ、いきっ」

悔しくも息がもたないため大輝の胸板を叩けば、仕方がないとばかりに残念そうに口を放す大輝。そして、やっと大量の酸素を吸い込み大輝を怒鳴る。怒鳴るといっても大声を出すつもりはない、咎めるだけだ。

「大輝はなにがしたいんだ」
「ああ?別に理由なんかねぇよ、赤司の唇見てたら欲情しちまってよ。だから、キスした」

それを聞いた後に大きい溜め息を吐いてから、テキストで頭を叩いてやった。因みに、角で叩いたから鈍い音が教室中に響いた。

(TPOをわきまえろ、)

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