今だけ泣かしてください 部長と双子やったらよかったのに、 ぱちくり、そんな音を立てながら瞼を何回も閉じた。俺の隣でぽつりとそう呟いた財前に正直言うと動揺を隠せんでおった。なんで、いきなり双子とか言ったんやろ。 「財前?」 「…ひとりごとなんで、気にせんでいいっすわ」 そう言われても困んねんけど。ほんま手の掛かる後輩やな。まあ、ええわ。そして、一回目普通に理由を聞く。 「気になるわ、なして?」 「…せやから気にせんでください…ほんまどうでもいいことっすから」 「ええやん、な、教えたってや」 二回目、わざと耳元で低い声で呟いて理由を聞く。これは、絶対に効くためよく使う手や。財前も学習しとる癖に弱い、そんなとこもかわええ。俺にベタ惚れみたいでな。 「っ、いうんで、それっ辞めてください部長」 耳を赤くしながら言う財前を愛しく見ながら、おんと一言返事を返し言葉を待つ。 「…ぶ、部長と双子やったら、ずっと傍におれるやないっすか。卒業とか関係あらへんし、歳だって気にせんでええ、せやからっ」 財前が言葉を言い終わる前に、思いっきり抱き締めた。ぎゅうっと、強く…ひたすら強く。それから口を開いて言葉を財前に向ける。今、俺自身が思っている全てのことを。 「アホやな…そら双子やったらええこともあるかもしれん。けどな、キスやセックスは出来んで?それは俺いややな…それに歳の差がなんや、離れとったらあかんの?俺はええと思うわ、年下やったら存分に甘えさすし。…それでも、俺と双子になりたいん?」 最後まで口に出しきると、少し胸に濡れた感触を感じる。きっと財前の涙やな、と思いながらツンツンの黒い髪の毛を撫でた。たくさん泣いたらきっと、すっきりするわ。俺は、胸を貸して抱き締めることしか出来なくて少し悲しかった。 これは俺が、卒業する一週間前の出来事やった。 |