3、2、1!で
出来た真っ赤な林檎さん!


ちらちらと、愛しい目がこちらを伺っている。それを、眼鏡の奥に潜む目で確認する。

「どないしたん?」

そう声を掛けると、びくりと肩を震わせていた。それを見てあかん、そんな姿さえもええわ…などと思った。

「なんも、ないっすわ」
「ほー、ならええわ」

そんなやりとりがあって、また沈黙が走る中こちらに目をやる財前に思わず口が緩む。まあ、大方俺が眼鏡かけとるからちらちらみとんやと思うんやけど、などと考えながら、さてほんまはどーなんやろな、財前?と目で言葉を発するようにして財前と目を合わして含んだ笑みを浮かべる。その笑みが自分はお前のことなんかお見通しなんやで?というのが些か気に入らなかったのか、財前は眉間に皺を寄せながら口を開けた。

「…なんで、今日眼鏡かけとんっすか」
「なんでやと思う?」
「知るわけないやないですか、絶頂(エクスタシー)男が考えることとか」

疑問を疑問で返され不機嫌な顔をする財前。ほんま、かわええな。

「教えたろか」
「別にどっちでもええです」

不機嫌な財前のご機嫌を取るため、眼鏡をかけている理由を教えてやろかと持ちかける。案の定、言葉ではどうでもいいような態度をとっているが、顔には少しばかり嬉しそうな表情がみえる。それから、財前の耳元に自分の顔を近づけていつもより低い声で囁いた。

「財前に惚れ直してもらうためや」

(はい、真っ赤かな財前光くんの完成やで!)

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