トランキライザーなボク達

赤司くんにとって、ボクとはいったい何だろう。仲間?友達?恋人?どれも当てはまりそうで、当てはまりそうにもない。そう考えながら、読書に励む赤司くんを見詰める。

「…テツヤ」
「はい」

本のページを捲る手を休め、ボクの名前を呼ぶ赤司くん。それはじっと見つめていた視線に気付いていたか、はたまた視線には気付いていたがそれがうっとおしいと感じてボクに声を投げかけたのは分からない。だが、黒子テツヤという生き物に意識を向けてくれただけでボクは生きているという心地にいたる。

「なにか用かい?」
「…いえ、なにもありませんが、…」

ただ、赤司くんを見詰めていただけで特にこれといった理由を持ち合わせていなかったが、先ほど自分自身で考えていたことを赤司くんに話したいと言う衝動に駆られた。しかし、言葉には出来ずに沈黙に走ってしまう。

「僕はエスパーでもなんでもないから、口に出さないとテツヤが考えていることもわからないからな」
「そうですね…赤司くん、君にとってボクってなんですか?」

沈黙を破った赤司くんの言葉は明白であり、考えていたことを全て曝(さら)け出すことにした。そして、赤司くんにとってのボクとは何かというのを聞いた途端赤司くんが栞の代わりに指を本に挟んでいたが、その指がスルリと滑り落ちパタンという虚しい音が響いて本が閉じた。

「僕にとってのテツヤか、…そうだな精神安定剤ってとこだろう」
「精神、安定剤ですか?」
「ああ、英語ではトランキライザー。僕の精神状態を安定させるにはテツヤがいないといけないってとこかな」
「…そうですか」

精神安定剤、トランキライザー…そんな言葉がくるとは思いもしなかったので、僅かに躊躇したがすぐに赤司くんの言葉はボクを喜ばせた。顔には出さない、出ないが。ボクがいないと困る赤司くん、ボク無しでは生きられない赤司くん。そう考えただけで、とてつもなく嬉しくなり顔が綻ぶ。

「満足したかい?」
「はい、とても」
「そうか、ならテツヤ…テツヤにとって僕ってなんだい?」

無表情なボクの顔でも表情を読み取る赤司くんが、くすりと笑い問いを投げかけてくる。しかし、ボクの答えは一つしかないだろう。赤司くんもそれを分かり切っているのに聞いてくるあたり、彼は酷く意地悪だ。ボクは答えを言うために、口を開けた。

(赤司くんは、ボクの精神安定剤)








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