手をつないで走ろう

謙也さ、っん、はやっ…い。それが部活が終わり謙也さんに手をつながれ二人でだいぶ走ってから止まった時に出た初めて言葉やった。

「すまん、すまん」
「こんの、はぁっ…ヘタレスピードスターぁ」
「誰がヘタレや!」

ヘタレスピードスターに対して怒る謙也さんをそっちのけに、息を整える俺。あかん、部活後に走るとかキツイ。謙也さんは、最初は息が上がっとみたいやったけど今はもう普通通り。自称スピードスターゆうぐらいはあって、走ることに関しては苦しゅうないんやろなと片隅に考える。

「にしても、なんで行き成り走ったんすか」

やっと息が整ったため、放置していた謙也さんに尋ねる。アホくさいことやったらただじゃすまさへん。

「…え」
「え、ってなんです。ほんま、なんとなくとかゆうたらただじゃすまさへん」

図星だったのか、謙也さんは肩をびくりとさせた。図星とかなんや。無駄に俺の体力使わせてなんなん。ああ、謙也さんの制で糖分必要やし、善哉食いたいわ。
そう物思いにふけっていた俺を余所に、プリン状態になっている自分の髪をガシガシと触って謙也さんの口が開く。

「イライラせんといてや!なん、あれや、…光とおるのもあと少しやから青春謳歌みたいなことしたかってん」
「…あほ」

だんだん、俺の顔が赤く染め上がる。それはきっと理由を謙也さんが話したから俺の顔が赤いんやなくて、走ったから赤いんやと自分に言い聞かせた。そして、今だ繋がれている手を自分からぎゅっとキツク握りしめた。

離れないように、ただぎゅっと。

(この手がずっと繋がれとったらええのに、)

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