好きの反対の、反対

千歳さんは、はっきりと思ったことを口にする。俺とは全く違う。部活の休憩中でベンチに座っている今でも、そうだ。

「光くんは、むぞらしかね」
「はぁ、そっすか」

どうでもいいかのように、返事をする。内心、ドキドキしているのは俺にしかわからへん。手にしている、ドリンクホルダーをぎゅっと握りしめる。

「つめたいばい、光くん…でもそぎゃいなとこもすいとおよ」

そう言って、シュンとした表情を見せる千歳さん。…あかん、なんなんこの人。俺が照れるようなことしかゆわん!どないしよ、顔赤くなってへんやろか。

「光くん、どげんしたと?」
「…べ、つに」

黙っていた俺を不審に思ったのか、千歳さんは俺の顔を覗き込んできた。…どないしよ、心臓うるさいんやけど…、ほんまこの人とおったら調子狂うわ。

「それなら、よか。ん、あの猫むぞらしかね」

いきなり、遠い場所に目を向ける千歳さん。何かと思えば猫やった。それは真っ黒い猫で、あのジブリのジジに似とった。しかし、そんなことはどうでもええ。俺が気にしたのは千歳さんがむぞらしかね、…可愛いと言ったことやった。猫に嫉妬やなんて、ダサいきまわりなかったけど、してしもうた。

「千歳さんのアホ、…好きの反対の、…反対っすわ」

せやから、ついいつもは到底言えないことを思わず口に出してしもうた。ほんま、アホなことしてしもうた。そう思って言ったことを取り消そうと千歳さんを見た。千歳さんは、少し驚いた表情をしてその後すぐに優しくて、温かい顔になった。…また、ドキドキしてきたっちゅーねん。そして、それだけやったらええかと思い気や、「光くんはほんまむぞらしかね、だれよりもすいとおよ」この台詞ときたわけや。

あかん、完全にショートアウトしてしまうわ。ほんま、なんなんこの人…好きやけど。そう思いながら、千歳さんの腕に寄り添った。

(嫉妬する光くんもよかよか)

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -