指切り

※大学生、同棲設定

いつものように、お互いに好きなことをして過ごす。それは、講義が休みだと日課になっていることやった。オレは休みでも研修の勉強の復習をし、光は音楽雑誌を読んだりなどいろいろやっとった。ふと、勉強をしていた手を止め光に目を向けると自分の目が可笑しくなったのか直ぐさま疑いたくなってしもうた。

「え、」
「どしたんすか、謙也さん」
「ちょっ、ひか、光!」
「せやからなんすか」

怠そうに返してくる光を余所にオレはめっちゃ慌てた。それは、光の手に物件雑誌があったからや。

「なんで、そんなん読んどん!?」
「…あー、」

歯切れが悪そうにする光に、いろいろ言いたいことが募ってくる。…もしかして、オレと別れるっちゅーことか?嫌なことを想像してしまいながら、光の言葉をただ待った。それから少しして、光の口が少し開いた。

「…謙也さんが卒業したら、此処出ますわ」

目を伏せながら光は、そう吐いた。

「なんでなん、」
「謙也さん、医者なるんに嫁さんもろおて後継ぎとかつくらなあきませんやん」

くしゃっとした、表情で光はそう言った。そら、医者にはなるけど誰が嫁とって子供作るって決めたんや。光が勝手に判断したことやろ、それは。オレは、この先ずっとお前とおりたいねん。光はちゃうんかいな。自分の中でいろいろ葛藤する。そして、光に対して出た言葉は、

「勝手に決めんなや」

怒りを含んだものやった。そんなオレの言葉に光は肩をびくりとさせた。いつものオレが出すような声やなかったから仕方ないんやけどな。

「…なに、怒ってんすか」
「怒るに決まってんやろ!オレがいつ、お前に将来は嫁さんもろおて子供つくって家庭築くなんてゆうたんや!オレはな、光とこれからも一緒におりたいねん!!別れんっちゅーことや!せやなのに、自分ほんま大概にせえよ!!」

思った言葉を次々出した。すると、光が片方の手の平で目元を覆うようにした。しばらくしないうちに、光の頬に涙が伝ってきてオレはびっくりした。

「ひか、る」
「だれも、…本心でゆうとる訳ないっすわ、けん、やさんのために、ゆうとるのに。っ…俺かて一緒におりたい、せやけど俺とおってもなんもないですやんっ!」

涙声で、ときどき鼻を啜りながら光は言った。それがとても胸にどっしりときたが、嬉しくも思うた。光の本心でないことがわかったからや。

「光、小指出し」

光は目をオレと合わせ、不思議そうにした。それから、怖ず怖ず小指を出した。その小指をオレは自分の小指と絡ませた。

「オレと光はこの先誰にゆわれようが永遠に一緒や、ええな?」

そう吐いてから、お決まりの"ゆびきりげんまん、うそついたらはりのーます、ゆびきった"と歌ってやった。そして光を見ると、ポカンと間抜けな顔をして、声を発した。

「アホっすわ、謙也さん」
「なんやと!」

オレは真剣にやったのに、こいつは!などと思っていたら目をオレから外し、

「…まぁ、でも嬉しいんでええです」

今だ繋いだままの小指を見ながら、優しい表情で光は笑った。それがとても胸にキュンときた。反則やっちゅー話しや!

(絶対離してなんかやらん)

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