甘ったるいファーストキス

いつも通りに部活が終わり、着替えている時に金ちゃんが問題発言をした。

「なぁなぁ、ひかるー」
「なんやねん、金太郎」

ユニホームから着替えとる財前に声を掛ける金ちゃん。これが謙也やったら、財前は完璧に無視しとるやろうな。

「ファーストキスがレモン味ってどういうことや?」
「…は」

唖然となっているのは、財前だけではなくこの場所にいた金ちゃん以外の皆やった。もちろん、俺も。

「変なもんでも食ったんか」
「ちゃうわ!クラスの女子がな、ファーストキスがレモン味やって騒いどったんや!!」
「…なんで俺に聞くんや」

どうも、金ちゃんのクラスの女子の中でそういう類いのものが盛り上がっとるらしい。まぁ、中一の女子やからそんなもんやろなって思うねんけど、なんで財前に聞くかわからんわ。

「ひかるが1番知ってそうやって思うたんや!」
「…部長のほうが知っとるやろ」

面倒臭さそうに、金ちゃんに返す財前。そして財前の言葉を聞いた金ちゃんは、ぐるっと俺の方を向き寄ってきた。んんー、財前面倒事回してきよったな、ちょっと仕返ししたろ。

「白石!白石!」
「金ちゃん落ち着き、んんー…ファーストキスがレモン味やってゆうのは迷信みたいなもんや」
「迷信なんか?」
「俺もよおわからんしな、でも俺が経験したのは善哉味やったで?」

サラリと吐いた瞬間、財前の肩がピシッと固まった。そして、最後にとっておきの言葉を口にした。

「あれ、財前も経験したことあったわ、な?」

強調してやると、勢いよき後ろを振り返り俺を見てくる財前。あ、顔真っ赤や。

「…なに、ゆうとんっすか、部長」
「んー?」
「俺、まだですわ」

平然を装いながら喋る財前に、俺のS心が芽生える。もっと、辱しめを受けさせてやりたくなる。

「せやったか、…ならもう一回してやるわ」
「は、」

ちゅ、軽くリップオンが部室に響いた。そして、顔を真っ赤に染めている財前に口許がつり上がった。ああ、かわええ。



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