アイスとキス

休憩中にテツヤ、と声を掛けられる。振り向かずとも分かる、ボク達のキャプテンだ。

「赤司君」
「さっき何処にいってた?」
「…コンビニです」
「へぇ、なに買ってきたわけ」

赤司君はそう吐くと、ボクの次の台詞を聞かずにボクが手に持っていたコンビニの袋を漁りだした。ガサガサと音がする。しばらく、赤司君が漁る姿を見ているとバッと赤司君が顔を上げた。なにか、良い物でもあったのでしょうか。

「テツヤ、これなに?」
「チューペットですね」
「チューペット」

赤司君が取り出したのは、ビニールチューブにジュースが入っていて、それを凍らせて2つにパキッと割る棒ジュースだった。地域や人に因って『チューチューアイス』や『パッキンアイス』などと呼び方は違う。ボクは、チューペットって呼んでますが。

「冷たいけど、」
「アイスみたいなものです」
「へぇ、食べたことないな」
「…一緒に食べますか?」
「ああ」

ボクが提案すると、赤司君の顔が嬉しそうになる。これを見れるなら、これからも買ってしまいそうだ。ふと、考えながらパキッとチューペットを2つに割る。そして、片方を赤司君に渡す。

「ありがとう、テツヤ」
「いえ」

二人共同じくらいに、チューペットを食べ出した。練習後に冷たいものは持って来いだ。黙々と食べていると赤司君が声を出した。

「意外においしい、今度買ってみよう」
「それはよかったです」
「ああ、テツヤありがとう」

お礼を言われ嬉しく思っていると、赤司君のチューペットで濡れた唇が目に留まる。それに酷くムラムラしてしまい、赤司君に声を掛けた。

「赤司君、」
「ん?」

ボクの目を見た瞬間に、赤司君の唇を奪った。チューペットの甘い味がした。今日はとってもいい日でした。後日、赤司君に『チューペット』も『キス』も初めてだったらしい。ボクが、赤司君のファーストキスを貰えたことは何よりも嬉しかった。

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