愛してほしいんです 思ったんだけど、なんで俺なの?と、数分前に幸村くんからそう言われた。だけれど、答えることができないでいた。あかん、オレってヘタレやったんか。 「ちょっと、白石?」 「お、おん」 「…まさかさ、疚しいことでもあるのかい?」 「ちゃうよ、そないなことはないって」 オレの答え方が気に食わないのか、顔を歪める幸村くん。いや、きっと理由ゆうても納得してくれへんと思うんや。ただ、直感でこの人や!みたいな感じやったし。髪の毛もええ匂いしよったし。…まぁ、一目惚れってことなんやけど。 「ふーん、ならさ当ててあげるよ」 「お、おん?」 「どうせ女顔だから俺のこと選んだんじゃない?」 「ない」 「へー、そんなにきっぱり言えるんだ?真田でも俺のこと初め女だと勘違いしてたのにな。疎い白石には、一発でわかったのか」 幸村くんの容赦ない言葉が、オレに突き刺さる。確かに幸村くんのこと初めは綺麗な女の子やと思うとった。けど、そんなんで幸村くんに告白したとかない。…それより、 「なんで真田くんでてくんねん、今関係ないやろ」 「…弦一郎って例えに出しただけだろう、それもいけないのかい?弦一郎がいけないのかい?ん?弦一郎、弦一郎、弦一郎」 いつもは、真田ゆうとんのにわざわざ弦一郎呼びってどういうことや。それにオレを挑発するように何べんも言う。もう限界やっちゅうねん。真田くんは幼なじみってだけで嫉妬しとったのに名前呼びなんかされたら堪ったもんやない。オレだって、名前呼びがええわ。 「幸村くん」 「なんだい、“白石”」 その言葉を聞いた瞬間に、幸村くんの細くて白い手首を掴んで押し倒した。 「いった、」 「堪忍、幸村くん。でもなオレも我慢の限界やねん。それに、オレの思いも通じてなかったみたいやし、これから体に教えたるわ」 にこりと効果音が付くぐらいオレは笑った。そんなオレに対して怯えることも嫌がることも感じさせない幸村くん。強がっとるだけか?と思っとったけど違ったみたいや。 「ふふ、好きにしなよ蔵ノ介」 首に腕を回され、耳元でそう吐かれたからだ。ああ、誘っとったことか。ほんま、幸村くんには敵わなんわ。さて、可愛がったもん勝ちや! |