男はみんな狼なのよ

…なんや、めっちゃ視線感じんねんけど。主に腰に。はっきり言って、気色悪い。確認するのもあれやけど、絶対あの人や。熊本弁のあの人にきまっとる。

「光くん」
「なんです、千歳さん」
「ちゃんと食べとると?」

…は?なにいっとんや、この人。食べとるって、食べとるわ。

「食べてますわ」
「なら、なんでこんなに細かね?」
「え、っ!ひっう」

千歳さんの大きい手が、俺の服を通り抜け、直に腰に触った。なに、しとんやこの人。

「や、めっ」
「食べとるのに、どぎゃんこんな細かね?光くん」
「っ、」

そう千歳さんは言いながら、俺の腰のラインをいやらしく撫でる。俺が腰が弱いのをこの人は知ってるはずや。所謂、確信犯だ。最悪やな、この人。

「ちとっ、せさん」
「んー、光くんどげんしたと?」
「あっ、ひうっ、」
「むぞらしかね」

あかん、嫌な雰囲気になってきよった。このままやったら、流されてお終いや。それだけは、避けんとあかん。

「ちと、んんっ」
「ん、」

咎めて辞めさせようとしたが、上手くいかず口を塞がれどうすることも出来んくなった。…どないしよ。百歩譲って、いややないけどハードな練習の後の千歳さんとの行為はキツイ。なにがって、身長にあれって比例するやん。せやから、毎度キツイ。千歳さんは、気にも留めず笑って突っ込んでくるけどな。(ガチャ)…は?ガチャ?

「お、まだおったんか…」

現れたのは、部長やった。そら、そうやろうな。部室の戸締まり部長がやっとるわけやし。

「し、白石」
「…なにやっとんや、千歳。部活には真面目に出んくせに、ええ度胸やな」

ああ、めんど。白石部長を見てから、固まった千歳さんの腕は弱くなっていたため簡単に退かすことが出来、容易に脱出した。それから、千歳さんへ説教をする部長の声をBGMに乱れた服装を正し、ラケットを持って帰ることにした。

「帰りますわ」
「ちょ、光くん!待つとね!」

少しだけ、行為に惜しく思いながら千歳さんの声を無視して部室を出た。

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