冷たい気候が起こす素晴らしいもの

ぶるぶると寒さに震える後輩が一人、言わずとも金ちゃんやない。五つもピアスを開けており、オレを完全に嘗めている財前のことや。そないにしても、そんな寒いんやろうか。さっきから、体ぶるぶるさせとる。その姿に愛しさが芽生えるのは当たり前や、あー、オレほんま財前のこと好きやな。

「くしゅん」
「…ざ、財前?」

一人、心の中で葛藤していると突然に聞こえたくしゃみ。当然のことに、オレはくしゃみをしてないから、きっと…いや絶対にくしゃみしたのは財前や。いや、財前がしたとかそんなんええやんやけど、…そのくしゃみの仕方が問題やっちゅーねん。

「なんっすか、謙也さん」
「いまの、くしゃみか?」
「はぁ?くしゃみやったら、なんかあるん?…なに、俺がくしゃみしたらあかんのっすか」
「ちゃう、ちゃう!ちゃうから!そない怒らんで!しかも、ちょくちょくタメ口やで自分」
「めんどうっすわ、…っくしゅ」

あああ、あかん!破壊力ハンパないねん!お前のくしゃみの仕方。くしゅんとか、くしゅってなんや!!女子か!?…いや、女子でもぶえっくしょいとかオッサンみたいなくしゃみする子おんねんけど。

「謙也さん、なにさっきからぶつぶつゆうとんっすか」
「へ、あ!ななななんもないで!」

雄叫びをしていたら、じーっと冷たい目で財前に見られとったから慌てて平然を装う。まぁ、あんまそない器用なことできんのやけど。

「…まぁ、ええっすわ。ところで謙也さん」
「おん、」
「しゃーないんで、謙也さんのジャージください」
「え、」

ちょ、くしゃみに続きジャージって!あかんやろ!オレのジャージ…彼ジャーか!!身長はオレのほうが高いねん、せやからちょっとだけ財前が着たらダボっとなるんやで!?…今日はなんでこんなご褒美みたいなことあんねんやろ。なんかの予兆やねんかな。…ええねんけどな、財前のこんな姿見れんのやったら。ああ、白石に自慢してやりたいわ。オレの財前はこんなにもかわええんやでってな!

「…あかん、この人聞いてないわ…しゃーないし部長に借りるか」
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