もう一人のボクが生まれた 白竜と出会って皆とサッカーをして楽しく毎日を過ごしていた筈だった。だから、大切だった妹のことを忘れていた。なによりも大切だった妹のことを。それがいけなかったのか…もし、妹のことをきちんと頭の片隅にでも考えておけば今悩まなくてもよかったのかな。 「…君は誰なの?」 「え?シュウだよ?」 「…なに言ってるかわかんない」 「可笑しいよね?今までサッカーを怨んでたのに、今はサッカーが楽しいだなんて」 「…君には関係ない」 「あるよ、だってボクはシュウだもん」 そう言って、目の前にいる僕と同じ容姿をしたやつが笑う。容姿は同じ癖に色は違う、正反対な色、白色だ。僕が黒ならアイツは白だ。本当に最悪だよ愛しい白竜の白色なのに気味が悪くなってきてるんだから。…笑い方も僕と同じで気味が悪い。 「…そう、ならなんで君は生まれてきたの」 「さっき言ったでしょ?妹が死んだ悲しみが積もりに積もってかな。ボク自身がよくわかるんじゃないの?」 「…そうだね」 そう、最初僕にとってサッカーは復讐のために必要で妹のためにやってただけ…。けど、そんな憎悪などは浄化されたと思っていた筈だったけど違うみたいだ。なぜなら、その塊が僕の目の前にいるんだ。なんで、今更でてくるの。一つの疑問が湧き、白いボクを見る。僕の視線に気づいたか、アイツは途端に口元を酷く歪まして口を開いた。 「大切な人を殺すためだよ」 それを聞いた瞬間、僕は背中に冷や汗をかいた。 (僕自身が生み出した感情の塊は僕がどうにかしなきゃいけない) |