全てにおいて愛しい


※白竜はでてきません

最近カイに現代のことを教えてもらっている。僕は、何も今のことを知らないからね、知りたいっていうのが本能だと思うっていうのは嘘で、本当は白竜との会話をわかるようになりたいって思ったんだよね。好きな人のことをわからなかったら嫌だし。ふふ、そんなでカイにお勉強させてもらってる。今日はなんだろ?

「シュウ」
「あ、カイ!今日はなんの勉強?」
「今日はさ、有名な画竜点睛の話をしようと思ってさ」
「が、がりょうてんせい?」
「やっぱりわかんない?」
「うん」

そっか、と言ってカイは僕の隣に腰掛けてきた。そんなカイの手には一冊の本があった。それが、先程のが、がりょ?えっと、がりょうてんせい?の話が書かれている本なんだろう。でもなんで、それなんだろう?

「よし、早速読むかな」
「あ、待ってカイ」
「ん?」
「なんで、そのがりょうなんちゃらなの?」
「え、シュウが好きそうな感じだったから」
「…そうなの?」

疑問に思っていたことを投げ掛けたのはいいが、結局よくわからなかった。…まあ、お話を聞いていたらわかるか。

「じゃ、気を取り直して読むから」
「うん」

カイがぱらぱらと本のページをめくる音がする。そして、少しだけカイは息を吐くと唇を軽く開け話始めた。

「張僧は、呉中の人です。梁の武帝は仏教寺院を立派に飾るのに、多くを張僧に命令して寺院に絵を描かせました。金陵にある安楽寺に描かれた四匹の白い竜には、張僧は瞳を描かないままでした。張僧は常に言っていました、“もし瞳を書き加えたら即座に竜が飛び去ってしまうであろう。“と。人々は張僧の言葉をでたらめだとみなして、竜の絵に瞳を書き加えるようにと強く頼みました。張僧が瞳を書き加えると短時間で、雷と稲妻が壁を破り、二匹の竜は雲に乗り、勢いよく飛び去ってゆき、天に昇っていきました。二匹のまだ目を書き加えてない竜は、まだもとのまま現存しています。…おわりなんだけど、どうだった?」

カイが再び息を吐いて終わった。それより、こ!興奮しちゃった!カイがなんで僕にが、えっと、画竜点睛の話をしたのかわかった。

「はく、白竜がでてきた!」
「うわー、予想通りの反応で」

そう、僕の大好きな白竜が出てきてもう嬉しくて最後は興奮状態だったよ。ああ、本人に会いたいな…今は、たぶん自主練してるんだろうな。これが終わったら、スポーツドリンクとタオルを持って行って存分に白竜の充電をしなきゃ。

「やっぱり、白竜は凄いね。ふふ、あれ?白竜って人間だよね、カイ」
「え、あ、この白竜っていうか白い竜は物語の話だから」
「ふーん、白竜についてまだないの?」
「いや、だから白竜じゃなくて、ああもういいや。んっと、白い竜は、天帝の使者とされてたんだってさ。だから、偉いってことかな」

また、カイの言葉に反応する。え?天帝の?やっぱり僕の愛しい愛しい白竜の話じゃんか、カイ。そんな顔をしていたのか知らないけど、カイがうわーみたいな呆れた?ような顔をしてこっちを見てきた。

「なに、カイ」
「いや、白竜じゃないけど、白竜みたいなのがでてきた物語聞いただけで幸せそうだなって」
「?」

カイの言葉の意味がよくわからなかった。

「なんか、俺ら他のやつのにはそんな顔してない」
「僕、どんな顔してる?」
「白竜が好きで好きでたまらない顔」

尋ねると、カイが指をぴしっと僕に指してきてそう言った。人のこと指で指しちゃいけないっていったのカイなんだけど。まあ、それはいいや。にしても、僕そんな顔してたんだ。ふふ、今の気持ちを声に出していいたい。言ってもいいよね?

白竜、だーいすきっ!
さて、会いに行こう。

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