弱いきみに愛しさが芽生える



謙也さん、と自分を呼ぶ声がした。まあ、オレの横に財前が布団に包まっておるから当たり前なんやけど。呼ばれたので布団を見つめると、細くて白い財前の手が少しだけ出てきていた。そして、オレは財前の手を握る。冷たいねんな、と思いながら。

「財前どないしたん?」
「…けん、やさん」
「ん?オレはおるで」
「けん、やさ、ん、謙、やさん謙也さん、」

狂った様にオレを呼び続ける財前。ほんまにどないしたんやろ。まあ、大方わかるっちゅーねんやけど。財前の口からきちんと聞きたい。だから、ずっと待っとる。

お、れ、…おれ、

何分か経ってから、やっと財前が声を出した。少しだけ奮えながら。あかん、なんか今の財前は壊れそうや。

「ぶ、ちょなんか…む、りっす、わ」
「…そんなこと無いわ」
「むり、っ」

いつもの財前ではなく、弱い財前。オレしかしらん。不謹慎やけど、かわええなとか思っとる自分がおる。まあ、どうにかしてやりたいっちゅうのもあんねんけど。元部長の白石だったら、財前のことわかってやれると思うねんけど、財前がオレを頼ってきとるから白石にはなにも言わへん。ほんま、どないしよか。

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