白い病室の中に、風が吹き、蒼髪色が輝き、軽くウェーブがかかっている髪を風が通り抜ける度になびかせる。それを俺は、何をする、発することも無く見続けていた。

「真田、」
「…なんだ」
「さっきからさ、オレのこと見つめてて恥ずかしいんだよ」
「すまない」

幸村が出した言葉に、普段通りに何事もなく返していく。

「…まあ、いいや」

俺の返事が面白くなかったのか、幸村は顔を下げ手元にある部活のことが書いてある蓮二がまとめた紙に目を落とす。今の、立海テニス部の状態を紙に書いてある字からでも把握したいというのが、部長として何かあるのかもしれん。

「みんな、頑張ってるみたいだね…」
「たるんどるやつもいるがな」
「赤也のことだろ、それ」

ハハッ、と声を少し高く上げ笑う幸村。今日、幸村に会って初めて聞いた笑いだ。こいつの笑い方は男の俺からでも思うように綺麗だ。

「…はやく、テニスしたいな」
「治せばいい話だ」
「まあ、そういうことになるけどね…」

ほんの少し間が空いたあとに、…治ると思うかい?と幸村が小さく吐いたのを俺は聞き流さなかった。それを聞いた瞬間、部長としてそんな甘ったれた根性は解せんと感じた。

パシッ

そして、自分でも気づかない無意識のうちに幸村の頬を叩いていた。青白い肌に、ほんのり赤色が映えて見える。それを目にして、幸村を初めて叩いた罪悪感が出るが構わずに言葉を口にする。

「たるんどるぞ、幸村!」

病室であり、病人の前だということにもなりふり構わず、大声を出して怒鳴った。幸村は、なにも言わずに手元にあった紙をシワになるのも気にせず強く握りしめる。その光景を少しの間見ていると、ぽた、と音がした。それは幸村の手の中にある紙に落ちてじわじわと染みていく。何度も、何度もゆっくりある程度の速度で幸村の頬を伝って涙が落ちては紙に染みる。俺が幸村の涙を見たのは何年間もの間幼馴染みとしていたが初めてだったのだ。

それをただ、時がいくら経とうと見続けた。

初めて見せるキミの涙
(俺は幸村になにができるのだろうか)




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二万打ありがとう
悲しい感じの真幸。
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