年齢詐称


ある休日の昼下がり。
いつもの4人で釣りをする約束をしていたのだが、ユキとハルがまだ到着していなかったので、夏樹と俺で先に釣り始めていたときのことだった。

「お前ってさ、本当に25歳なの?」
「は?」

いきなり何を言い出すんだ、この男は。

「だってさ、大人ぶってるけどシイラがかかれば無邪気に喜ぶしさ、ユキがマグロ釣るときも自分に釣らせろってうるさいし、みんなで釣りして楽しかったみたいだし、傘は可愛い感じのアヒルだし、それに」
「もう黙れ」

つまり、以上もろもろの要因から、俺が25歳より幼く見えるってことか?
最近のガキは本当に失礼極まりないな。

「25歳って言ったら世間一般では普通に就職してるぞ?」
「俺だって勿論就職してる」
「高校通ってて釣りもして、いつなんの仕事してるんだよ」
「………カレー屋」

少し胸が痛んだ。
いや、嘘はついてないぞ、嘘は。
本業じゃないだけだ。

「えっ、もしかしてあの黄色いしらすカレー屋か?」
「ああ」
「へえー、今度食いに行っていい?気になってたんだけど、アキラが経営してたんだな」
「そうだ。まあ……許可してやらなくもない」
「ったく、お前ほんっと素直じゃねーなあ。もっと気持ちに従順になれって!釣りしてるときみたいにさ」

カラカラと笑う夏樹の言葉が胸に響いた。
気持ちに従順、か。
それを聞いて、そういうのも悪くないと思えるようになっていた自分に少し驚いた。
悪く言えばガキっぽくなっている、良く言えば童心にかえっている、という感じだろうか。
彼の言う通り、確かに25歳らしくはないかもしれないな。
こんな風に感情の棘がなくなってきたのも、きっと、彼ら3人のおかげなのだろう。

自嘲気味に笑ったあと、このまま言われっぱなしも癪だったから、言ってやった。

「じゃあしらすカレーを食わせる代わりに、お前も俺にしらす丼食わせろよ」
「はあ?なんでだよ、絶対断る」
「おい、それは不公平だろ」
「誰が公平じゃなきゃいけないって決めたんだよ。ユキのばあちゃんの飯食わせてもらえよ。あ、しらすカレーさ、しらす抜きでよろしくな」
「なんでユキんちが出てくる。俺だってしらす丼気になってたんだから等価交換だろう。というか、しらすカレーのしらす抜きってただのカレーじゃないか!」

ぎゃあぎゃあと言い合いをしていたら、俺の竿にシーバスがかかった。
結構デカかったものだから、ついシイラ釣りのときのようにまた興奮気味に叫んでしまった。
そんな俺を見て、隣の釣り王子は、「やっぱりお前、25歳じゃないだろ」と笑うのだった。


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120623
この二人はからかい合ってる感じが可愛いと思います。




 


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