「‥ほ、本当に来るんか」
「もちろん!」
薄くだけれど化粧をした私は、恐らく普段よりは見れる顔だろう。
髪の毛はようやく胸下まで伸びたので緩くカールして前髪は横に流した。
服装は膝丈の腰に大きめのリボンの付いたワンピースを着てカーディガンを羽織ってパンプスを履いてお姉さま風に。
手土産もばっちり持ったし、頬の体操も完璧だから緊張で笑顔が引きつることもないだろう。
そんな私は今、仁王の家にお宅訪問に来ている。
――‥約一時間前
デートの約束をしていた私達は駅前で待ち合わせをしていた。
約束の五分前に私は着いたのだけれど、既に仁王は居た。
そして、予想はしていたんだけど、やはり女の子達に話しかけられている。
「雅治、」
割り込むことに罪悪感はあったけど、このままじゃ約束の時間を過ぎてしまうし、何より何か悔しい。
私より可愛い人ばっかりだし‥
そんな格好悪い感情を抑えつつ、声をかけた私に仁王が反応する。
「都雨‥!!」
おわあああ見られてるよ私!
仁王の近くに行くと女の子達に恐ろしい程にジロジロ見られた。
品定めされているようでムッときたのでニッコリと余裕ぶった笑みを貼り付けるとハッとして女の子達はどこかに行ってしまった。
‥余裕ぶったけど、凄い顔になってたのかも‥本当格好悪いなあ。
「雅治、やっぱモテるねえ‥」
普通に言ったつもりだったが顔が不満そうだったようで仁王が困った顔をする。
そんな顔をさせたかったわけじゃないけど、さっきの女の子達に向けていた無表情とは違って表情があることが何だか嬉しくて、笑ってしまった。
「‥都雨、お前さん、何でそんな格好しとんじゃ‥」
「‥え、やっぱ似合わない?」
駅から出て歩いているといくつかの視線を感じたけど、きっと仁王が格好良いからだろう。
ラフな服なのに、小さな装飾でさえ高級そうに見えてしまう彼に若干嫉妬。
もごもごと口ごもっている仁王を不思議に思って見上げると何故か顔が真っ赤だった。
「ちがっ、‥っ、‥かっ」
「か‥?」
「か‥かわいい、し、似合っとる」
「!」
「‥じゃから、さっきから男共の視線が鬱陶しいと思ってのぅ」
「は?何言ってんの、見られてんのは雅治だよ、格好良いから」
「!‥‥どこ行くかのぅ(死ぬ)」
誉められたことに上機嫌で一瞬で幸せいっぱいになった私はなんて単純なんだろう。
話題転換してくれた仁王に、今日はどうしても行ってみたい場所があったことを伝えた。
それが、仁王の家なのだ。
――――――――‥
「本当に何もないんじゃが‥」
「いいのいいの」
そうして頼み込んでようやく連れてきてもらった一軒家。
ガチャ、と仁王が家の鍵を開けると中から、雅治帰ったの?と女の人の声がした。
「お帰りなさい。‥あら?」
「あ、おっ、おじゃまします!暁 都雨ですっ」
「雅治の母です。最近雅治の機嫌が良いと思ったら‥」
「黙りんしゃい‥都雨、部屋行くぜよ」
「えっ、うん」
「あとでお菓子持ってくわね」
(大好きな君の居場所に)
((あ、雅治の彼女!?可愛いじゃない!私にも紹介しなさいよ)(うるさーい!)(おや、雅治の彼女か)(と、父さん))
――――――‥仁王side
「(うわああ‥都雨が俺の部屋にっ)」
「どしたの仁王」
「ふふ、雅治はね、都雨ちゃんが―‥」
「まじででていってくださいおねえさま」
「?」
「(だから連れて来たくなかったんじゃあ)」
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