恋をした。
それは桜散り出す4月のこと。
ようやくランドセルとお別れをして
神奈川県に引っ越してきた。
通うのは立海大付属中学校という、中々のテニス強豪校。
まあ、上の奴らには毛ほども興味はないが。
校門にはたくさんの新入生がいて、数人の先生らしき人もいる。
これから毎日通う場所なのに、まるで特別だとでもいうようにはしゃいでいるのそいつらを尻目に一人、人気のない方向へ向かう俺は恐らく無表情だろう。
ふらり、と一際大きな桜の木に向かって歩く。
ざわざわと賑わう声は既に遠くなっていて、何となく心が落ち着いた。
「綺麗じゃのう‥」
そう口に出したのは、誰に宛てたわけでもなく、ただ、事実を言っただけのつもりだった。
「ほんとだね」
まさかの返事に心臓が跳ねる。
その声の主は桜の木の下にある落葉低木の陰から出てきた少女。
猫を抱き上げてにこりと笑った少女は、制服の状態や顔の幼さから見て、同じく新入生だろう。
「猫に着いてきたら、いつの間にかこんなところに」
聞いてもいないことを照れくさそうに話す少女に、不思議と嫌悪を抱かなかった。
にゃー、と鳴く猫を一撫でしてからあなたも新入生?と聞いてきた彼女に、これまた不思議と自然に応えてしまっていた。
「そうぜよ、」
しまった、思わず方言で話してしまった。
どこから来たのかなんて質問が面倒そうだから、標準語で話そうと思っていたのに。
舌打ちしたい気持ちを抑えて、その場から離れようとした。
「方言、素敵だね。私、標準語しか話せないから羨ましい」
「!」
‥この言葉を聞くまでは。
脈を打ちだす心臓に叱咤し、金魚のようにパクパクする口から声を出す。
「う、うらやましい‥んか?」
「?うん。変かな、私は好きだけど」
しゅうぅ、顔からそんな音がしそうなほど頬が熱くなった。
今までにも、好きだとかかっこいいとか言われたことはある。
でも、ここまで恥ずかしかったことはない。
しかもこの好きは方言に対してであって自分に対してではないことも分かっいる。
なのに、だ。
「そ、そうかのう‥」
何となく、この気持ちの名前が分かった。
恐らくこれが、
゙初恋゙というものなのだろう。
「は、やばい、お母さんに怒られる‥!じゃあね!」
そう言った彼女がざわめきの方へと消えてしまった後も、暫く熱が引くことは無かった。
「(お礼、言いそびれたぜよ)」
次話すときには、必ず礼を言おうと心に決めた。
(この気持ちを忘れないように方言で過ごそうと思った)
((また話しかけれんかった‥)(ヘタレだね)(ヘタレ)(ヘタレだな)(うるさいダニ!)(だってその暁さんに話しかけるって言い出して二年も経ったぜ?)(‥‥うぅ))
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なんとなく、話が繋がっているのが分かるでしょうか!←
土佐弁グダグダで申し訳ない
あのあんがとさんは、授業が終わったことを教えてくれたのに対してよりも、入学の日のことに対してのが大きいです。
分かりづらくてすいません。
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