「雅治、お弁当作ってきたよ」

「ほ、ほんにか!」

「うん、休憩のとき一緒に食べよ!」

「おん!もちろんじゃ!」


今日は土曜日で午前しか練習が無い。
授業も無いため、いつものように女子生徒がフェンスを占めることもなく仁王とその彼女である暁が話していても何の障害も無いようでニコニコと楽しそうに談笑している。


「熱いっすねぇ。羨ましい」

「ほう、お前も彼女が欲しいのか?」

「もちろんっすよ!」


赤也が暁を可愛いと思っている確率100%。
これはデータというよりは目で分かることだが、恐らく「あんな可愛い彼女欲しいなー仁王先輩いいなー」といったところだろう。


「仁王先輩はどうやってゲットしたんすかねぇ。あの先輩でしょ?一目惚れしてた相手って」

「仁王の一目惚れから始まりヘタレなあまり話しかけることなく二年が経ち、今度は体育館の倉庫で暁が仁王に惚れて告白をしたらしい」

「仁王先輩ダサッ!結局暁先輩に全部大事なとこ取られてんじゃん!」


確かにそうだ。
男である仁王からではなく、女である暁に告白させるのは頂けないな。
仁王のデータに"超"ヘタレと付け加えておこう。


「仁王先輩が一目惚れってことは顔で決めたんすかね」

「本人曰わく、雰囲気が超可愛かった。桜の妖精みたいじゃった。だそうだ」

「…そっすか」


準備運動を始めて五分。
いつになれば仁王は暁から離れようとするのか。
先ほどから精一が発している黒いオーラを感じて欲しいものだが…


「ほら、雅治。早く行かないと部長さんに迷惑でしょ」

「やじゃあ…離れとうない…」

「部長さーん、雅治に外周させてあげて」

「そうしようか。十周行っておいで、仁王」

「ぴよっ!?」


やはりこうなるか…。
暁は周りも良く見えているとデータに加えておこう。
本当に仁王には勿体無い彼女だとつくづく思うが、まあ当人同士が幸せならば良いだろう。


(半泣きで暁から離れる仁王を見て赤也が引いていたのは)
(見なかったことにしてやろう)






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