遊びました




とある日の日曜日、僕は駅にいた。
小鳥先輩の言った「今度の休みに遊ぶ」という計画を実行するためだ。
指定は12時に駅の中にあるコンビニ。
因みに今は11時50分で僕はそれの更に10分前には着いていた。
楽しみで早くに目が覚めた訳では断じてなくて、やはりいくら友人とはいえ女性を待たせてはいけないと思ったからだ。

「おっ。早いねぇ」

「こんにちは」

小鳥先輩はフワフワとしたワンピースを着ていて薄いピンク色のそれと先輩の亜麻色の髪はとてもよく似合っている。
が、そんなことを言えるはずもなく。

「どこから行きますか」

「んー…お昼食べた?」

「いえ、まだです」

「じゃあお昼にしよっか。ファミレス行こ」

スルリと僕の手を握って足を進める先輩。
友人というのはこのようなことをするものだろうか?

店内に入り店員に席へ案内してもらうと、その店員はニコッと笑って今だけカップルだとランチが三割引なんですよ、と言った。
カップル?僕たちが?
慌てて違いますと訂正しようとすると小鳥先輩に机の下で足を蹴られた。思いっきり。

「〜〜〜っ!」

「どうかなさいましたか?」

「何でもないですよ。ね?」

「…っはい」

「じゃあこのAランチ2つで」

「かしこまりました」

ふふ、と上機嫌な先輩に小さく痛いじゃないですか、と抗議をする。

「だって海藤くんたら糞真面目なんだもん。そんなに嫌だった?カップル」

カップル…。
僕と小鳥先輩が、付き合っているということか…!
いや、確かに手を繋いで(というより捕まれて)店内へ入ったけどそれイコール付き合っているというわけではないのに店員が勝手にというよりそもそも先輩は知ってて手を握ったんじゃ…こんな緊張してるのもきっと僕だけできっと小鳥先輩は何とも思ってないんだ。


「…小鳥先輩はひどいです」

「いきなり話飛んだねー。なんで?」

「……俺ばっかり、」

「うん?」

「俺ばっかり楽しみで緊張してるんだ…!」

「えええ何この子可愛い」


ほら、そうやっていつも可愛いばっかりで先輩は僕を男としては見てくれない。


「ん?」

「え?」


男として見てくれない?
僕と小鳥先輩は友人であってそれは性別なんて関係無くて…

「まさか…」

「どうした海藤くん」

まさか、僕は…

「小鳥先輩を…好き?」

「それは聞かれましても…」


いや、好きなのは確かだ。
どこぞの友人を大切にしない先輩よりも何倍も、何十倍も。
もしや…この胸の苦しさもドキドキも全部、友人よりも上の関係になりたいからなのか?


「小鳥先輩!」

「はい?声大きいよ海藤くん」

「僕と…、親友になってはくれませんでしょうか!」

「は?」

「僕はどうやら、先輩と親友になりたいようです!」

「なんだそれ」

「小鳥先輩といると、胸が苦しくて、ドキドキして、小川先輩たちと同じ友人という括りじゃ満足できません!」

「海藤くん、それって…」

「お願いします!親友になってください!」


そう言い切ると、何故か店員と他の座席の人からの拍手を浴びた。


「姉ちゃんなってやりなよ!」

「青いねぇ」

「今回は目を瞑ってカップル料金にしときますね」


あ、しまった。
カップルじゃないのがバレてしまった。
また蹴られるかもとそーっと小鳥先輩を見ると、仄かに頬が赤くなっていた。


「海藤くん、」

「は、はい」

「親友にでも何でもなるから」

「本当ですか!」

「うん、だからとりあえず座ろうか」


僕は今日、世界で一番勇気を出したのでは無いだろうか。
そのあとはきっちりとカップル料金を支払って、妙に目を合わせてくれない親友の小鳥先輩との時間を楽しんだ。




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