悪魔のようです
何となく思い立って、もう一度昼休みに屋上へと行ってみることにした。
悲しいことに自分には友人と呼べる者はいない。
そして前に先輩と会ったときに考えたような一緒にご飯を食べたり話したりする関係に一番近いのは先輩だということに気付いたのだ。
先輩と話すのは楽しかったし、からかわれてばっかりだったけどそれでも優しさは垣間見えた。
小川先輩とは違って友人への愛情も感じられた(デンジャラスだったが)。
「小鳥先輩、」
「おやー海藤くん。また1人?」
「…先輩だって1人じゃないですか」
「おお、言うねぇ。…海藤くんが来るような気がしてさ」
ふふーんと笑った先輩。
僕が来るような気がした、それはつまり僕を待っていてくれたと取って良いのだろうか。
そんなことを聞く間もなくお弁当を広げ出した先輩に考えるだけ無駄かと脱力する。
「小鳥先輩は、ケンカすることが好きなんですか?」
ふと思ったことを口に出す。
少なくとも僕と居るときの小鳥先輩はすごく穏やかでニコニコしているから、見た目は置いておくとして不良とは感じられない。
僕の個人的な考えでは、不良イコールケンカっ早くて態度が悪い。常識が無い、と悪いところしか上がらないからだ。
「それが誰かを助けることになるならね」
だから、何の迷いもなくそう言い切った小鳥先輩に、憧れを感じた。
この人は不良なんかでは無いかもしれない、そう思ったのは「スカッとするし!」と言う言葉で消え去ったけど。
「海藤くんはさ、友達欲しいの?」
「そりゃ、まあ」
自分で聞いておいてふーんと興味の無さそうな返事をしないで欲しい。
本当に、この人は雲のようだと思う。
強く気高く美しい、孤高な存在。
自由を好んで縛られることを嫌いフワフワと浮いている正に変わり者だ。
余程不服そうな顔をしていたのか先輩は軽く笑うとス、と手を差し出してきた。
「じゃあ私と友達になろうよ」
「は?」
何を言っているんだこの人は。
僕たちは先輩と後輩であって決して友達になるような、ってあれ、先輩と後輩は友達になってはいけないのだったか。
ぶつぶつと口に出していたようで先輩は堅いなぁと困ったように笑った。
「先輩と後輩よりも少し親しくなるだけだよ。今と変わらない。でも、ほんの少しだけ近くなるの」
ね、と小鳥先輩は笑う。
普通の友達すら出来たことのない僕が先輩と友達になるなんてどうなんだろうか。
それでも、近くなれるのなら。
そう手を取った僕に満足そうに微笑んだ小鳥先輩を、とても綺麗だと思った。
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