出会いました




この高校にはたくさんの生徒がいて、その生徒の中の1人の僕にはどうしても苦手な先輩が二人いる。
小川平介先輩と小鳥奏先輩という、まあタイプは違うがどちらもフワフワと掴みどころの無い謎な人達だ。
小川先輩の友達を適当に扱うようなところは嫌いで、その他にもたくさん文句はあるが、小鳥先輩が苦手な理由は自分でもよく分からない。

そして今、その先輩と屋上で会ってしまうという一方的に気まずいことこの上ない状況に陥ってしまった。どうしよう。


「………」

「……?」


とりあえず睨んで見るも先輩は見た目に反して穏やかな性格なのか特に怒る訳でもなく、ただ頭にハテナを浮かべている。

綺麗に染められた亜麻色の髪に右耳に2つ左耳に1つ開けられたピアス。
着崩された制服の胸元から覗く黒いTシャツに短いスカートから惜しげも無く出された白く綺麗な足っていかん僕は何を考えているんだ!

1人恥ずかしさに悶えていると不思議そうだった顔に少しだけ怪訝さも含まれて咄嗟に「校則違反の塊ですね」と仮にも先輩に対してケンカを売るようなことを言ってしまった。

慌てて謝ろうとすると、なんと「その髪型は校則違反じゃないの?」とこれまた不思議そうに返されたのだ。


「これは地毛です…!」

「…ごめん、クルクルだからパーマかと」

「クルクル…!」


この先輩は人を傷つけるのが得意なようで、しかも恐らく無意識にだから質が悪い。
ぐっ、と再度睨み付けると軽く笑われてそれからまた不思議そうな顔に戻った。


「1人で昼ご飯食べに来たの?」

「……悪いですか」

「ひねくれてるねぇ。一緒に食べようよ」


つん、とそっぽを向いて返した言葉にまさかの返事。
うぇ?と思わず変な声をあげると可愛いなぁと笑われた。
可愛いってなんだ可愛いって。


「ほら、座って座って」

「…先輩は1人で食べる予定だったんですか」

「私?私はいっつも食べる人違うからね。未定だったよ」


なんと。
昼食を不特定の人と食べるなんて僕には理解が出来ない。
友達と言うのは一緒にご飯を食べて、一緒に行動をして、話したり遊んだりするものではないのか。

と疑問をそのまま口に出すと、少しの間を開けて先輩は口を開いた。


「君、堅いねぇ。私はそうやって縛られることがあんまり好きじゃないな」

「縛られる?」

「そう、みんな同じことして何が楽しいの?ただ自分は周りと変わらないんだっていう安心感が欲しいだけでしょ」

「安心感…」

「そーそ。好きなときに好きなことやるのが一番」


難しくてよく分からなかったが、とりあえずこの先輩は僕とは考えが違って、尚且つ少しだけ小川先輩と似た考えをしているのを僕は空気で感じ取っていたから苦手だったのかもしれないなと1人納得した。
思っていたよりも嫌いではないことは確かだ。



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