「おや、海藤くん」


「こんにちは」


「こんにちはー。移動教室?」


「はい。先輩はどうしてここに」


「じいちゃんとこにちょっと」


「そうですか…また何か壊したとか?」


「またって。お菓子貰うだけだよ」


「それは…まあいいです。失礼します」


「あ、ちょっと待って!」


「はい?」


「はい、あげる」


「…レモン、…飴?」


「そ、レモンの形の飴!味はオレンジなんだよー珍しいでしょ」


「なんか惑わされますね」


「ふふ、じゃあ頑張ってね」



「…何なんだあの人は」


「今の、」


「うわ!?」


「今の、先輩の彼女」


「あ、ああ」


「長谷ー、いきなりいなくならないでよ」


「先輩の彼女が」


「あぁ…にゃんこ先輩だっけ。可愛い人だね」


「谷村さんたちもあの先輩を知っているのか」


「まあね。それより海藤くんが先輩の知り合いなんて」


「…あの先輩の、纏っている雰囲気が心地良いのかもしれない」


「…長谷みたいなこと言うのね。好きなの?」


「好きなんて!だいたい、先輩は仮にもあのヘラヘラした先輩の彼女だ!」


「人を好きになるなんて理屈じゃないみたいよ」


「理屈?」


「だって長谷は、今でも…」


「チャイム鳴っちゃう。行こう」


「…そうね。海藤くんも、急いだほうがいいんじゃない?」


「…あぁ」


まさかそんな、好きだなんて
無い無い無い(と信じたい)





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