バカップルへ30題(11〜20)


13.お昼寝


「こっちに来なよトウヤ、窓際は日差しが気持ちいいんだ」
「本当だ。……もう春か」
「ボクたちが初めて会ったのも春だったね」
「ああ、あれか」
「車道に迷い込んだ子猫をボクが避難させてあげようとしたら、運悪くトラックが来て」
「あの時はかなり焦ったな」
「でも、運良くキミが助けてくれた。驚いたよ、間違いなく轢かれると思っていたから」
「冷静に自分の命を諦めるなよ……目の前で人身事故起こされてたまるか」
「そうだね。危うくキミにトラウマを植えつけるところだった。助けてくれて本当にありがとう。……キミの自転車が犠牲になってしまった件については……1年経った今でも『ごめん』としか言えないのが心苦しいよ」
「だからそれはもういいって。弁償してもらう代わりにお前が俺の家庭教師をするって決めただろ。自転車代以上にこき使わせてもらったし」
「確かにこき使われた自覚はあるけど、」
「それに」
「それに?」
「こうして休みの日まで俺に付き合ってくれてるし」
「……急に神妙な顔になってどうしたんだい?春休みだろうとお前を手放す気はない、なんて宣言したのはキミの方じゃないか」
「お前の言い方だと、俺が無理矢理そうさせたみたいに聞こえる」
「まさか。キミは強引に従わせているように見せかけて、実はボクの事情をちゃんと察してくれているじゃないか。……気付かれていないと思ったかい?」
「……」
「とにかく、ボクは春休みを毎日キミと一緒に過ごせることが嬉しくて仕方ないんだ。二人でゆっくり昼寝できるしね……ふあ……」
「N?」
「ん……」
「い……言い逃げ……だと……」


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16.年越しソバ


「改めて思うが、キミのお母さんはすごい人だね」
「な、何が?」
「ソバまで自家製で作ってしまうなんて、すごい」
「ああそういうこと」
「一般家庭ではあまりしないことなんだろう?年末にソバ作りというのは」
「普通は買って来て食べる方が多いと思う。周りの家と比べたことないけど」
「羨ましい限りだね」
「うちは毎年こうだから、ありがたみをあんまり感じないんだよなあ。その分、Nが素直においしい!って言葉にして感動してくれるのが、母さんは嬉しいみたいだ」
「それはもう、本当に美味しいからね。今食べたばかりのソバだって絶品だったよ。明日の朝、またお礼を言わなくてはね」
「母さんはさっき寝たんだっけ。って、もう11時か!Nも眠いだろ、普段こんな夜更かししないし」
「大丈夫だよ。年を越すまでは起きていると約束したからね」
「それを無理やり約束させた当の本人は、早々に寝落ちしてるけどな…」
「トウコ、こたつで寝てしまっているけれど、いいのかな。風邪をひいたりしたら…」
「安心していい。トウコに限ってそれはない。これだけ気持ちよさそうに寝てるんだから大丈夫だよ」
「トウコの頑健さを語る時のトウヤは、いつになく自信に溢れているね」


「さて、そろそろ今年が終わる」
「なんだかあっという間だったな…カウントダウンの前に片付けするか」
「その前にトウヤ」
「えっなんで正座?」
「いいから」
「は、はい」
「…キミと過ごしたこの1年間、ボクにとっては初めてのこと、楽しいことばかりだった」
「それは…俺もだよ」
「節分の豆まきは、本当に楽しかった」
「トウコが本気になって鬼役のチェレン追い回したからな、面白くないわけがない」
「豆は、年齢の分だけ食べるということを初めて知った」
「うん」
「春には、桜の木の下でお弁当を食べたり」
「ああ」
「デザートのチーズケーキは格別だったよ。トウヤの作ってくれる甘い物はどれもおいしい」
「ありがとう」
「サイクリングの途中で、坂を転がり落ちたことすらいい思い出だ」
「そんなこともあったっけ…」
「夏には海に行ったね。焼いたとうもろこしは、焦げたところまで味わい甲斐があった」
「とうもろこしにかぶりつくNは新鮮だったなあ」
「秋には焼き芋をして」
「うん」
「冬はこうしてトウヤの家に呼んでもらって、年越しソバをご馳走になった」
「…思い返すと食べてばっかりの年だったな」
「おいしい食事の体験は、すなわち幸福の体験なのだと。そう気付くことができた1年だった」
「幸福…」
「しあわせ、と呼んだ方がいいかな」
「……はー……」
「どうしたんだい」
「Nのそういう顔見てるとさ…俺もすごく幸せな気分になるよ。で、もっとおいしいもの食べさせてやりたいって思う」
「願ってもない光栄なことだ。よろしく頼むよ」
「そうやって大真面目にリアクションしてくれるところも最高」
「ふむ。ということは、キミのその表情も『嬉し涙』と解釈するべきかい?」
「嬉し涙と笑い涙で半分半分ってとこかな」
「キミも新年早々泣いたり笑ったり大変だね」
「新年ってまだ…」
「時計を見てごらん」
「うわ、もう0時回ってたんだ!テレビつけてたのに気付かなかった」
「ふふ、あけましておめでとう、トウヤ。今年もよろしく」
「あけましておめでとう。こちらこそよろしく」


ごはんをおいしそうに食べるNさんはかわいい。(迫真)
(2015/01/02)



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17.お花見


「どうぞ」
「何これ」
「何って今日はホワイトデーじゃないか。先月のバレンタインデーの時はトウヤがチョコレートケーキをご馳走してくれただろう?だからそのお返しにと思って」
「ホワイトデーなんて知ってたんだ?Nはそういうイベントに疎いからてっきり知らないものだと思ってた」
「ベルが教えてくれたのさ。ホワイトデーは3倍返ししなくちゃいけないってこともね。……3倍返しになっているかどうかは分からないけど、これ、ホワイトチョコのクッキーなんだ。よかったら貰ってくれないかい?」
「別にそんな気を遣わなくてもよかったのに……嬉しいけど」
「いいんだ、ボクがやりたいって思ったことだから。一応ボクの手作りだよ。これもベルが手伝ってくれた」
「最近会えない日が続いてると思ったら、俺に隠れてそんなことやってたのか……」
「うん、それについては申し訳なく思ってる。ごめん。ボクが料理下手なせいで何度も失敗したから、予想以上に時間が掛かったんだ。でもその甲斐あって、キミに食べてもらえるくらいの出来にはなってるよ。たぶん、ね」

「…………あ、うん、確かに美味い」
「本当に?」
「本当。ホワイトチョコのなめらかさと、クッキーの軽い食感のバランスがよく取れてる。美味いよ」
「よかった……おいしいって言ってもらえるか不安だったんだ。安心したよ」
「俺のために作ってくれてありがとう、N」
「お礼なんていらないよ。喜んでもらえただけでボクは、……っ!?」
「――愛してる」
「!!……な、な、何、言って……しかも、みっ、耳元、で、」
「一ヶ月前はNから好きって言ってもらったから、今度は俺から言おうと思って」
「……言葉の『甘さ』も3倍、とか上手いこと引っ掛けたつもりなのかい、トウヤ……」
「駄目だった?」
「だ、駄目も何も……ボクがそういうのに弱いことを知っていてわざとやってるんだろう……反則だ、卑怯だ、ずるい」
「お褒めに預かり光栄です」


まともに食べられる代物をNが作れるようになるまでの過程には、途方も無い時間とベルちゃんの努力があります。
(2011/02/23)



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19.ホワイトデー


「どうぞ」
「何これ」
「何って今日はホワイトデーじゃないか。先月のバレンタインデーの時はトウヤがチョコレートケーキをご馳走してくれただろう?だからそのお返しにと思って」
「ホワイトデーなんて知ってたんだ?Nはそういうイベントに疎いからてっきり知らないものだと思ってた」
「ベルが教えてくれたのさ。ホワイトデーは3倍返ししなくちゃいけないってこともね。……3倍返しになっているかどうかは分からないけど、これ、ホワイトチョコのクッキーなんだ。よかったら貰ってくれないかい?」
「別にそんな気を遣わなくてもよかったのに……嬉しいけど」
「いいんだ、ボクがやりたいって思ったことだから。一応ボクの手作りだよ。これもベルが手伝ってくれた」
「最近会えない日が続いてると思ったら、俺に隠れてそんなことやってたのか……」
「うん、それについては申し訳なく思ってる。ごめん。ボクが料理下手なせいで何度も失敗したから、予想以上に時間が掛かったんだ。でもその甲斐あって、キミに食べてもらえるくらいの出来にはなってるよ。たぶん、ね」

「…………あ、うん、確かに美味い」
「本当に?」
「本当。ホワイトチョコのなめらかさと、クッキーの軽い食感のバランスがよく取れてる。美味いよ」
「よかった……おいしいって言ってもらえるか不安だったんだ。安心したよ」
「俺のために作ってくれてありがとう、N」
「お礼なんていらないよ。喜んでもらえただけでボクは、……っ!?」
「――愛してる」
「!!……な、な、何、言って……しかも、みっ、耳元、で、」
「一ヶ月前はNから好きって言ってもらったから、今度は俺から言おうと思って」
「……言葉の『甘さ』も3倍、とか上手いこと引っ掛けたつもりなのかい、トウヤ……」
「駄目だった?」
「だ、駄目も何も……ボクがそういうのに弱いことを知っていてわざとやってるんだろう……反則だ、卑怯だ、ずるい」
「お褒めに預かり光栄です」


まともに食べられる代物をNが作れるようになるまでの過程には、途方も無い時間とベルちゃんの努力があります。
(2011/02/23)



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20.留守電


『……もしもし、トウヤ?こんな時間に電話をしてごめん、別に何か用事があったわけじゃないんだ。ただ、キミの声が聞きたくてね……。本当にそれだけなんだ。このメッセージを聞き終わったら、ボクに電話してくれると嬉しい。……待っているよ』

「ふふふふふふふ」
「……何やってんのトウヤ」
「3日前の留守電聞いてる」
「は?そんなん今更聞いたって意味なくない?」
「いや、この留守電再生するの今ので56回目だし」
「はあああ?」
「留守電を聞きながら、俺が電話に出なくてがっかりしてるNの顔を想像して悦に浸るだけの簡単なお仕事」
「……あんたの姉であることを今ほど後悔したことないわ……」



トウヤがNを好きすぎてトウコちゃんもドン引きするレベル。
(2013/02/08)



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