ねこまねお色気回(赤葦寄り)
「ごっ、ごめん!!眞桜!!」
日向は地面に向けるはずのホースを誤って眞桜に向けてしまったのだ。 向けられた眞桜は見事に濡れ鼠である。切り揃えられた前髪はぺっとり額に張り付き、ゆるりとうねるツインテールも元気を無くしていた。
「いいよー暑いしね〜」
だが、当の本人はニコニコ笑って髪を絞っている。 そんな時、たまたま通りがかった赤葦がギョッとしたように目を見張った。
「家狸、どうしたの、その格好……。まあ、なんとなく予想はつくけど」
赤葦はホースを持ったままの日向を見て言った。ホースからはまだ水が流れている。とりあえず赤葦はそれを止めるために水道へ向かった。
「!?え?そこのホースが悪いんだけど!わたしわるくないよ!?」 「おっ、おれのせい……」 「ひなちゃん!?大丈夫だから!ひなちゃんのせいじゃないから!!」
眞桜は日向の肩を掴んでガクガクと揺さぶる。日向は青褪めた。 赤葦は日向の顔色の変化に気付いて慌てて二人の間に入る。
「家狸、落ち着いて……!!」
その時これ迄意識してなかった眞桜の格好に気付き、顔を赤くした。
「うわあああ!!」
落ち着いた日向も目の前の眞桜の姿をハッキリと見てしまい、顔を茹で上げた。 先程の水が眞桜の白いTシャツを濡らし、下着が透けているのを真正面から見てしまった二人は赤面し、眞桜から顔を背ける。気付いてないのは眞桜だけで、不可解そうな顔をして濡れた髪を解き、髪とTシャツの裾を絞っているのだ。 赤葦は眞桜に着ていたジャージを着せ、出来る限り前を見ないようにジッパーを上げていった。
「家狸はこれ着て。前もちゃんと閉めて」 「え?赤葦くん?ジャージ濡れるよ?」
た、助かった……
日向はほっと胸を撫で下ろした。 目を瞑ればまだ薄桃の下着が浮かぶがまぁ目の前にあるよりマシだろう。
「大丈夫……!!」
赤葦は自分のジャージしか見えない眞桜を見て赤面した。まるで下に何も穿いてないような……。
「え?そう?」 眞桜は赤葦を下から見つめる。 可愛らしく首を傾げる姿に赤葦は頭を抱えそうになった。 「っほら、早く着替えてきな。そのままじゃ風邪引くよ」 「でも音駒、今から試合だし……」 「いいから!」 「!?」
眞桜はびくっと肩を揺らした。 強く言い過ぎたか。 赤葦は居た堪れない気持ちになった。 だが、この格好は男子高校生には些か刺激が強すぎる。いい例が日向である。赤面して固まってしまった。
「……ごめん。でも、ほんと、頼む。黒尾さんにはあとで俺が言っておくから」
えええ!?どうすればいいんだよ!これ、なんだべ?!
この状況に一番叫びたかったのは日向であった。 とりあえず赤葦と眞桜に思いっきり頭を下げ、体育館へと走り始めた。
「お、お邪魔しました!!」 「え!?ひなちゃん!?何言ってんの!!」
眞桜は日向を追いかけて体育館に走ろうとする。 そんな眞桜を赤葦が首根っこを掴んで止めた。
「家狸は着替えてから」
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