ねこまねと赤葦くん(ちょっと裏っぽいかもしれない)

※かなり未来。大学くらい?


眞桜から呼ばれ、部屋に足を踏み入れた赤葦は、ブラが無造作に放り投げられているのを見て、ため息をついた。

「眞桜」
「何ー?」

タオルケットに包まったまま、眞桜はくぐもった声を上げる。
声はハッキリしているけれど、布団は離したくないらしい。
そして彼女はベッドへと手招きした。
赤葦は遠慮なくベッドに乗り上がる。

「寝る時しないの?」
「?」
「投げ捨てられてるけど」

最初は疑問符を浮かべていた眞桜だが、放り投げられてるで把握したらしく、暗闇でも分かるほど顔を赤く染め上げた。

「…………くるしいし」

眞桜は顔をタオルケットに埋め、赤葦に背を向けた。指摘されたのが余程恥ずかしかったらしい。
だが、恥ずかしくて背を向けたはいいものの、距離を詰めて来ない赤葦を不満に思った眞桜はタオルケットから顔を出して、口を尖らせた。

「ねー。……何でそんなに離れてるの?」
「は?」
「同じベッドで寝てるのに。遠くない?」

こういう時の眞桜は厄介だ。
煽るだけ煽って、本人はそんな気がこれっぽっちもない。だけどスキンシップが少ないと怒る。

「ぎゅーっとしたりとか、ないの?」

だから毎度毎度のことながら、赤葦は我慢を強いられるのだ。
だが、今回は違う。ささやかとはいえ柔らかな膨らみが厚い背中に当たるのを、我慢するのはかなり辛い。下着が一枚とはいえあるのとないのでは全く違うのだと赤葦は熱くなった頭で考えた。

「京治くん?」

手を伸ばした先には眞桜がいる。
細い体を抱きしめて、顎を骨の浮いた肩に押し付けた。
あ、……ちょっと柔らかい。
赤葦は眞桜の長い髪をかきわけ、首筋をべろりと舐めた。

「っうひっ!?なっ舐めた!!」
「嫌?嫌なら早いうちに言って」
「そんな!いっ嫌とか!!」

眞桜は顔を真っ赤にして体を震わせたものの、逃げようとはしなかった。
赤葦は体を離し、呆れた様に眞桜を見つめた。

「え?何?」
「あのさ、これから何するとか分からないとか」
眞桜の表情は変わらない。
それはつまりそういう事を示す訳で。
赤葦は頭を抱えたくなった。

「嘘だろ……」
「あ、あのさ!いっ、一応そういう事って分かってるよ!」

違ったらしい。
その上で拒んでないとなると淡白そうな赤葦も俄然やる気が出るわけで。
勢いのまま組み敷かれた眞桜は、赤くなった顔を両手で覆った。

「でも心の準備が……」
「もう待たない」
「なんという!」

赤葦は寝間着のTシャツの裾を容赦なく捲った。
白い腹部が丸見えになって、眞桜は赤い顔を更に羞恥で染め上げる。

「捲った!捲ったよ!?」
「そのまま手を突っ込んでいいの?」
「見られるよりは……わたしぺたんこだし」

眞桜は赤葦の大きな手を両手で掴み、Tシャツの裾を潜らせた。
そして、物言いたげな目で赤葦を見つめた。
止めないから。
赤葦は羞恥のあまり目を潤ませる眞桜の耳に囁きかける。
眞桜は目を伏せ、そして静かにゆっくり頷いた。
この時をもって、赤葦京治の禁欲生活は終わりを告げたのであった。
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