ねこまね恋人疑惑をバレー部が調査(夜久さんオチ)
ある日のバレー部での出来事だった。 マネージャーであるはずの眞桜の姿が見当たらない。 黒尾はポールを片付けながら、大声で眞桜を呼ぶが返事はなかった。
「眞桜は?」 「向こうで電話中」 研磨がネットを片付けていた研磨が答える。 「は?」
それにしては長電話ではないか? 黒尾は片付けの時、眞桜の姿を一度も見ていない。 勿論電話と部活、どちらが大切かと言えば後者だ。 黒尾は眞桜を呼びに体育館の外に出た。
「もう!ばか!」
電話をする眞桜は随分楽しそうである。珍しく頬を染め、幸せそうに微笑む姿は百人が百人可愛いという程の破壊力であった。
「でも、そういうとこ好き」
眞桜の言葉に、気付けばいつの間にか居たバレー部の面子が固まった。
「…………は?」 「やばいやばいやばいこれあれだよあれ」 「小指立てんな黒尾」 「赤葦か?くっそ俺のスマホどこいった!」 「眞桜、赤葦と連絡先交換してないけど」 「まじか研磨!」
声を抑えた音駒高校バレー部の面々は決意した。相手を必ず見つけ出す、と。 こうして眞桜の彼氏を見つける為の奮闘が始まったのである。
「眞桜今から暇だろ?」 「は?」 「予定は?」 「普通にありますけど」 「おまっ……っ!俺はお前をそんな子に育てたつもりはありません!」
これは尾行だな。
殆ど全員の意思は纏まった。 尤も黒尾、夜久、研磨、海以外の面子は興味本位、つまり面白がっているだけなのだが。 だが、その尾行は一瞬にしてバレた。 高校の門をくぐり抜けた時、眞桜が彼らを待ち伏せしていたのである。
「何なんですか?ストーカーですか」 「ちがっ!違うんだ眞桜!」 「クロ先輩と口きかない」 「眞桜っ!!」
ぷいっと眞桜が顔を背けて、黒尾が泣き真似をするものの、眞桜は完全に無視である。 最初に研磨が白状した。 眞桜は研磨に甘いのだ。
「彼氏?デート?なにいってるの?」 「でも好きって……」 「女の子だよ?今日遊ぶ子」 「なんだ……」
研磨と夜久は、ふう、と溜息を吐いた。黒尾は感涙している。だが眞桜は完全無視だ。 それを研磨と海と、二人がかりで外した。黒尾は何やら言っているのを研磨と海が抑えこんでいるらしい。 眞桜は隣に居た夜久の袖を掴んでそっぽを向いた。
「……夜久先輩いるのにそんな事するわけないじゃないですか」 「え?」 「なんでもないです」
頬を染め、口を尖らせる眞桜の手を夜久が取り、優しく握った。 黒尾や研磨、海が懸念していた眞桜の「彼氏」は存外近くにいるのかもしれない。
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