ねこまねと岩ちゃんが付き合ってたら


「眞桜ちゃん?!なんで宮城にいるの!?俺に会いに来たの?!」
「は?」
「ガチでいやそうな顔しないで!」

眞桜の細い体を抱き上げて、これでもかという程抱きしめる及川とうんざりしたような顔で髪を引く眞桜がいた。
一緒にいた岩泉は何処か苛々とした表情を浮かべるものの、眞桜を気遣ってか何か、何もしようとしない。
そして見かねた国見が及川から眞桜を取り上げた。

「眞桜さん、こんにちは」
「あきらちゃん!こんにちは。及川さん引き剥がしてくれてありがとう」
「ああ、はい。慣れてるんですね」
「こんなタイプ先輩にいるしね」
「眞桜ちゃん今日もツンデレなの?!」
「抱きつかないでください」
「やーだね」

またぎゅう、と眞桜を抱きしめた及川に岩泉は青筋をたてた。
こいつ、シメる。
そんな決意と共に放たれたローキックは及川の尻を直撃し、衝撃により及川は眞桜を手放した。

「邪魔だクソ川。大丈夫か?眞桜」
「だいじょぶ」

岩泉に抱き着く眞桜を見て、及川は目を丸くした。
自分はあのクソ生意気な後輩みたいに猫に逃げられたりする質は無いのに!
及川は少し膨れて岩泉に食ってかかった。

「ちょっと岩ちゃん!なんでそんなに眞桜ちゃんとラブラブしてるの!」
「は?」
猫の様に岩泉に擦り寄る眞桜と岩泉を指して及川は憤慨する。そして国見も解せないという表情をしていた。
「眞桜ちゃん猫みたいでかわいいね……じゃなくて!距離感近いし!腰抱くなんてエロいし!岩ちゃんのくせに!岩ちゃんのくせに!!」
「付き合ってんだからいいだろ」

「………………えっ」

その場の空気が固まった。
普段省エネ男子である国見ですら口を開いたまま固まっていた。そして暫くして戻ってきた際にはむっと口を尖らせていた。及川は言うまでもない。
岩泉と眞桜はベタベタはしてないものの、雰囲気が違う。
照れ臭そうな、同じ空間に居るのが耐え切れなくなるような、初々しい雰囲気に及川と国見は重い溜息を吐いた。

「あれマジっぽいですよ」
「うそだあ……」
「嘘ならいいんですけどね」
苦虫を噛み潰したような表情で二人を見つめる国見に、及川は深く息を吐いて、肩を優しく叩いた。
「まぁなんだろ……どんまい、国見ちゃん」
「……」
「国見ちゃんまで無視!?」

間違いなく傷付いた後輩はいるし、自分は無視されるけど、幼馴染とこの可愛い獣が幸せならいいかと笑う彼女に振られたての及川なのだった。
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