▼ 冷蔵庫だよ赤葦くん!
「なー、赤葦。お前眞桜になんかしたのか?」 「しませんよ。木兎さんじゃあるまいし」 「なにおう!?」
音駒にマネージャーがいることは知らなかった。 何やら梟谷グループのマネージャーは皆レベルが高いとどの先輩も言うし、実際ウチのマネージャー方も顔は整っていると思う。 音駒のマネージャーもとても顔が整っていた。誰かが人形のようだと言ったが確かにそれは思った。 ぱっちりと大きな目に折れそうなほど細い体躯。二つ結びの長い、ウェーブのかかった黒髪。小さな唇、鼻。すれ違えば必ず目を惹く容姿だ。 ただ正直それだけだった。 すっげー人見知りなのか木兎さんに連れて行かれた時はガチガチになっていたが……音駒で主に向こうの主将をあしらっていたのを見ると、こういう人なのかと。
木兎さんはガン無視。だけど俺が来たからか何なのか、彼女はさっきまで無視をしていた黒尾さんの背中に抱き着いて隠れていた。 噛み付くって、動物かとも思わないことは無かったが、目があった瞬間また黒尾さんの背中に逃げたから避けられているのは俺で間違いないだろう。 妙に記憶に残っている。 黒尾さんの背中からひょっこり出てきた不安そうに目を大きく開いた顔が。
「避けられてるもんなー、赤葦」 「木兎さんは無視されてたじゃないですか」 それに。 「同じ学校のマネなら困ったかもしれませんけど、違う学校なので特に」
部活に支障はない。 そう言って踵を返すと、背後から赤葦クール……冷蔵庫……という木兎さんの声が聞こえた。
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