▼ 赤葦くんHB2

「赤葦くん」
「な、っ……」
繋いだままの手を引かれたその先、少し下を向けば目を瞑って立ち尽くす家狸がいた。待っていたせいかマフラーから出た白い頬と鼻が仄かに赤く色付き、長い睫毛が揺れる。
まるでキス待ち顔みたいなそれに心臓が大きく跳ねた。これはどうすればいいのか。赤く薄い唇が誘うようにふるりと震えた。

誕生日プレゼントだとでも言うのか。

それにしても何にしてもこんなチャンス、他にはないだろ。ライフカードが熱くなった頭の中で切られる。選択肢は二つだけ。するかしないか。ばくばくとやたら早い自身の心音を聞きながらその細い肩に触れた。
すると驚いた様に長い睫毛が急速に上に上がり、大きな瞳が顕になった
「赤葦くん?」
「えっと、これは……?」
「電話でね、言われたんだよね。十秒目瞑って待ってみ?って」

嵌められた。

立案者は木葉さんか?
それはそうだ。あの家狸だ。こんな事思い付くわけが無い。自分の馬鹿さ加減に目眩がする。目の前の彼女は頭に疑問符を浮かべ、ゆっくりと瞬きをした。きょとんとした表情もまたえらく可愛い。
やっぱり……キス、しとけばよかった。
そんな煩悩が出てくるのは思春期のせいにしておこう。


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