▼ ねこまねちゃんはこわい子
「あの子めっちゃくちゃ可愛い」
及川、岩泉が眞桜を送った翌日。 花巻は幾分かぽうっとした顔で言った。眞桜の事だと瞬時に理解した及川はケラケラと笑ってボールを叩いた。
「マッキーあんなのがタイプなの?」 「あれはタイプとか超越してんだろ。まじ可愛い」 「難しいんじゃないかな〜。なんてったって及川さんに反応示さないしぃ?」 「死ねクズ川。お前はお呼びじゃないんだろ」 「チョット岩ちゃん!?」
通り過ぎ際に及川に暴言を吐いて岩泉はボール出しをしていく。 及川は少し口を尖らせもしたが、直ぐに口元に笑みを浮かべた。岩泉と花巻はそれを冷たい目で見る。
「眞桜ちゃんはね、変な子だからサ」
面白いし、欲しいとは思うケド。
ボールをつき、及川は嫌な笑顔を浮かべる。幼馴染である岩泉は心底嫌そうに顔を歪めた。
「多分まともに見ちゃったりしたら目が離れなくなるだろうね」 「顔が整ってるから?」 花巻は不思議そうに語尾を上げて及川に尋ねる。及川は待ってましたとばかりに頭を振った。 「チガウヨー」 「だったら……」 「見た目で一目惚れされることも多いと思うよー。及川さんみたいに!」 「そういうのいらないんだけど」 「マッキーひど!まぁ、そんだけじゃなくてさ。深く知れば知るほど抜けられなくなるんじゃない?」
及川の頭に鶏冠頭がちらつく。彼も恐らくそうだろう。可哀想に。 だからこそ彼女とは距離の取り方を考えねばならない。自分も飲み込まれないように。 及川は後輩の黒い後頭部を見た。 怠そうに見える半開きの目が彼女の目に魅入られた瞬間を見てしまって以来、確信を得たからだ。 だからこれは警告でもあった。
「あんなのと恋愛なんてできる人がいるとすれば、とんだ猛獣使いだよ」
アンケリク:花巻に一目惚れされる 及川に気に入られる →
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