▼ 猫になったよ!ねこまねちゃん!2

「え、音駒のセッターと……誰?」
「……もしかして、眞桜ちゃん?」
「眞桜です!皆さん分かりませんか?」

眞桜と研磨が手を繋いでやって来たのは烏野の部屋だった。
何故かといえば、やることも無くぶらぶら歩いていたところ烏野部屋を見つけたからである。

「あ!眞桜!!研磨!」
「!?」

真っ先に気付いた日向が眞桜と研磨に飛びかかった。
二人は吃驚して小さく声を上げる。
菅原もびっくりした様に声を上げた。

「オイ日向!眞桜ちゃん潰れるから!!ヤメテ!」
「猫だ!」
「猫です!にゃー」

くっそ!可愛い!

眞桜に対して父性の湧いてしまった東峰、母性の湧いてしまった菅原、初期は美少女と崇めていた田中、西谷が悶絶する。
それを、月島は引いたような目で見ていた。澤村はにっこりと笑って見ている。
そして、一歩後ろにいる山口、成田、縁下、木下の口からは無意識のうちに可愛いが洩れていた。

だが。問題は遥か先にある。
眞桜が来たと聞いて隔離された者だ。
何度となく拒否された影山は人の山に入っていく事ができず、やたらと怖い顔でその山を見つめていた。
コミュニケーション能力が高く、眞桜に抱き着いたり至近距離で話す事のできる日向とは全くの正反対である。
誰かが彼の顔を見てヒィっと悲鳴を上げた。

「眞桜ちゃんって目悪かったんだな」
復活した菅原はニコニコ笑って頭を撫でている。
眞桜はその手にぐりぐりと頭を押し付けて懐いている。
それはもう癒やし以外の何ものでもなかった。
「あ、そうです!そのせいですかね?さっきから誰?と言われてばかりです」
「めっちゃ可愛い」
「確かに印象変わるけどわかった!」
「そう?分かんないけどそうなのかも」

研磨はだんまり。
喋っているのは菅原と日向と眞桜だけだ。

「眞桜ちゃん猫って感じだもんなー」
「それは研磨ですよ!」
「なんでおれに振るの……」
「二人共猫!」
「翔陽は犬っぽい」
「わかる!トスもらう時とか犬っぽいよなー」
「擬音多いし?」
「それは関係ないだろ!」
「眞桜も人のこと言えないし」
「え!?眞桜ちゃん馬鹿なの!?」
「ひなちゃんより馬鹿じゃないし!欠点無かったし!」
「全部40点台でしょ」
「!?それってかなりまずいべ?!」

そして和気藹々と喋った後、烏野部屋を後にした時、誰かが走ってくる音がした。

「あっ、あの!!」

影山の焦ったような声に猫二人が肩を震わせる。
が、ゆっくりと影山に向き合って二人はじっとしていたのである。眞桜が彼から逃げ出さないことに研磨は驚いた。
更に驚いたのは影山だった。

「!?……あ、えっと……かげ、やまくん」
「なっ…………撫でても、イイデスカ……」
「………………は?」

眞桜が思わず声を上げて、影山はやべぇという表情を、これでもかというほどした。
それに焦り出すのは眞桜である。

「え?や、別にそれくらいなら」
「!?アザっす!!」
頷く眞桜のフードを被った頭に、影山はごくりと唾を飲む。
「し、失礼します」
恐る恐る手を乗せた。そしてゆっくりと撫でると、眞桜は肩の力を抜いた。

「〜〜っ!」

影山にとってはもう一大事だった。
初めて動物が逃げなかったかのような感動が影山の中で湧き上がった。

「あ、アザーっした!!」
「あ、お粗末さまでした?」

影山はこれでもかというほど頭を、下げた。そして気付いた頃には来た道を走り出している。
研磨は呆れた様にぼんやりと彼の背中を見ており、眞桜は頷いてばいばーいと影山の背中に手を振った。


アンケリク:影山と絡む
菅さんと絡む


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