▼ 女マネ=潤い≠珍獣

「研磨もあれなんで放置出来るんだよ?」

山本はぼやく。
練習試合の為に梟谷学園に来る時、研磨の背中にくっついてる眞桜を見たからだ。
世間体を気にした夜久に引き剥がされたが、それでも眞桜は研磨のジャージの裾を離さない。
研磨は研磨でスマホを見つめてそれを無視している。

眞桜は研磨が好きだ。
勿論恋愛ではないが、研磨とコミュニケーションを取ること、くっつくこと、スキンシップを取るのが好きだ。
面倒を見てくれる夜久のことも大好きだが、同学年で一年の頃からべったりな研磨は別格である。
背中にぺったりくっつくのだって当たり前で、ひどい時には頬にキスさえする。
研磨も研磨でそれを全く気にしていない。
研磨の幼馴染の黒尾曰く、猫同士が戯れてるだけとの事である。
つまりはお互いに意識してないからこそ出来る事なのだ。
着くまでの間、山本は嘆いた。

マネージャー、めっちゃほしい!!

梟谷グループのマネージャーのレベルは物凄く高い。
勿論顔だけ雰囲気だけなら彼女もレベルは高い。だが中身が伴わない。
だが、そういう山本も眞桜が嫌なわけではない。寧ろ人間として、仲間としては好きだ。
それはそれ、これはこれというやつである。

「あの子めっちゃ可愛くね?」
「確かに!どっかのマネージャーか?」

何処かの学校の選手がいじける眞桜を見て頬を染める。

そうだよな、見た目はな。

山本は遠い目をした。
蓋を開けてみれば、運動能力のずば抜けて優れた正に動物みたいな奴である。噛み付くわ喧しいわ口は良くないわ落ち着きは無いわボトルでジャグリングし出すわ……。
因みにそのジャグリングしたドリンクは何故か美味かった。本人はカクテルみたいなものだと言っていたが、山本はそこら辺にもう突っ込まないことにしている。
その奇天烈な行動のせいでこれまで表に出せなかった奴である。
二年になって漸く少しは落ち着いたので今回練習試合に連れて行った次第だ。

「梟谷のとこのマネージャーの所に行け」
「……クロ先輩のアホ!!」

首根っこを掴んでポイと放り投げた黒尾を睨みつけ、体育館へ疾走る彼女は確かに可愛い。が、眞桜の走る速度は可愛くなかった。

やっぱり潤いが欲しい……。

何処か不安そうに目線をウロウロさせる福永の隣で切実に思った山本であった。


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