▼ お父さんみたい!旭さん!

アップの時の事である。
軽いフットワークの後、レシーブの練習をしていた時のことである。
部内一の下手くその日向のレシーブが妙に鋭くなって意図した所と全く違う所に飛んでいった。
そしてそのボールは得点表を出していた眞桜に飛んで言ったのである。
烏野勢は戦慄した。

「家狸さん!」
「眞桜ちゃん!」
「避けろおお!!」
「あ」

それに気付いた眞桜は綺麗なフォームでそのボールを上に上げた。
烏野のメンバーの誰もが瞠目し、眞桜を穴が開くほど見つめていた。
そして眞桜は危なげなくそれをキャッチした。

「大丈夫でーす。あ、どうぞ練習続けてください」

烏野の方にサーブと同じ要領でボールが返される。
力は無いが、日向の腕にすっぽりと収まるコントロールを見せた眞桜は何事も無かったように準備を再開した。

「家狸さんって……」
「経験者だよな、あれ」
「日向より遥かに上手い……」

菅原、東峰、澤村がぽつりと溢す。
その言葉に日向はショックを受けていたが、事実である。
誰もが眞桜を穴が開くほど見つめていた。

そして練習試合は烏野は音駒から一セットも取れずに終わったのだが、烏野にとって得るものはとても大きい試合となった。
試合後、片付けに明け暮れる眞桜の前に、大きな影が覆いかぶさった。

「あ、エースさん」
「家狸さん」

眞桜が自分に怯えないことに驚く東峰に、眞桜はとてとてと近付く。

「菅原さんもですけど、三年の先輩なんですから名前呼びで全然いいんですけどね」
「あ……じゃあ眞桜ちゃん?俺も旭でいいよ」
「はい!旭さんですね!それにしても旭さん大きいですね!」
「そうかな……?」
「うちのクロ先輩もでかいですけど、あれとは違う……そちらのキャプテンさんもですけど、なんかお父さんみたいです」
「なんか嬉しいな……。女の子はみんなビビって逃げちゃうんだよ」
「そんなことないですよ!肩車でもしてもらいたい感じです!」
「しようか?」
「いいんですか!?」

東峰はしゃがみ、眞桜を肩に乗せ、足を固定し立ち上がる。
眞桜は高くなった視界にきゃーきゃーと騒いだ。
その様子に戸惑った様子の海と青筋を立てた澤村が指を指し、喋り始めた。

「あれは何ですかね?」
「俺には誘拐犯と美少女に見えます」


アンケリク:旭さんに肩車をしてもらう


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