▼ ふざけんな、及川さん!
「あ。クロ先輩夜久先輩!」 「遅えぞ不良娘〜っ」 「夜久先輩〜っ!」 「眞桜!」 「俺は無視か!」
合宿所の前で待っていた黒尾と夜久を確認し、夜久に駆け寄ろうとした眞桜を及川が首根っこを掴んで止めた。 それを見た黒尾が前に出て、にこりと胡散臭い笑みを浮かべた。
「スミマセン。うちのマネージャーがご迷惑をお掛けしたみたいで」 「いえ。こんなに遅くに返してスミマセン音駒の主将サン?」 「おいクソ川、何して」 岩泉が及川の手を叩き落とそうとした瞬間、黒尾と及川の間に一足触発の空気が流れた。
「眞桜ちゃん、ちょうだい」
明るい口調の中に、棘と願望が包まれている。 それを読み切った黒尾が一瞬真顔になった。 感情が漏れた黒尾に、にやりと口角を上げて及川が茶化したように笑う。 黒尾は人の悪そうな笑みを浮かべた。
「だって羨ましい!こんなに可愛くて、経験者で!!ホント羨ましい!」 「ちょっとスイマセーン。こいつ居なくなるとマネージャー0なんで」
黒尾が眞桜に手を伸ばし、その手が届く前に及川は眞桜の腕を引き、抱き寄せた。 「ちょ!」 続きは及川の唇に飲み込まれた。 当事者以外の三人は息を飲んだ。 眞桜は魂が抜け、黒尾と夜久は驚きを隠せず、岩泉は開いた口が塞がらなかった。 そして一番最初に現実に戻ってきたのは岩泉だった。
「!?クソ川何しやがるんだ!」 「眞桜ちゃん、ウチに」 「死ねクソ川ああ!」 「いたああああ!!」 ガブぅと音がなりそうな程に及川の腕に噛み付いた。 そしてハッと生き返った黒尾は眞桜を引き寄せ抱き締め騒ぎ出す。 「ちょっとお母さん!!眞桜が!眞桜のファーストキスが!!」 「おれはお母さんじゃないっつの!黒尾お前主将だろ!?どうにかしろよ!」 「オイクソ川。一回で済ましてやんよ」
取り敢えず眞桜は再び噛み付こうとしてバタバタと手足を振り回していたが、夜久と黒尾が押さえつけ、合宿所に押し込んだ。 そして眞桜と夜久を中に入れた黒尾は及川を睨み付け、中に入った。 それを見て、及川は笑う。 「宣戦布告、かな?」
アンケリク:及川に噛み付く →
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