▼ 電話だよ!二口くん!

「クロ先輩、わたし合宿前日、親戚のとこ泊まりますね。監督からは許可されてますんで」
「おー。わかったわ……親戚?」
「宮城に親戚いるんですよ!」

嬉々として電話をかけ始める眞桜を黒尾は凝視する。
眞桜はコール音の際に表情と裏腹に苛々と貧乏揺すりをしていた。

「あ、堅治。わたし一日だけそっち泊まるから」
「男!?」
『ふざけんなぺったんこ!なんだよそれ聞いてねーよ』
「あ?いいでしょくそやろう!てめ、ぺったんこの何が悪い!」
『くそやろうっつったな!幼児体形!なんで他の部員と泊まんねーんだよ。もしかしてハブ?』
「ハブ?違うってば!お前やっぱ性格悪いな!てか幼児体形!?何いってんのお腹はへこんでんよ!逆にガリガリ過ぎて怖えからな!待っとけよ風呂乱入してやる!」
「!?」
『は!?入ったらキレるからな!』
「キレてみろよくそ七三!他めんは翌日来るんですーおわかり?おわかりですかー」
『うっざ』

途中男!?と叫んだものの、平常心を取り戻した黒尾は神妙な表情を作る。
眞桜はきょとんとした様子でぱちくりと瞳を瞬かせ、黒尾を見つめた。

「泊まりは男の家か」
「男っつっても従兄妹っすよ?変わんないですって。向こうも性格悪いクソガキなんで」
黒尾は頭を振った。
「ダメだ。襲われたらどうする」
「こんな鶏ガラみたいなの襲いませんって」
「ダメだ。お前はオヒメサマなんだ!背骨で脳で心臓なのは研磨だがお前も血液の一部なんだよ!」
「クロ先輩キモい」

黒尾の必死の説得にも彼女は耳を貸さず、堅治こと伊達工業の二口家に泊まることに決めた。


アンケリク:二口とくだらないことで言い争い


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