きみと僕の関係

部活帰りで足取りも重い今現在のことだった。
真夏まであと一歩となった最近、暗くなるのは凄く遅い。だというのにダウンを終えた頃にはもう外は夕闇に飲まれていた。もうそんな時間か。
一人でぽつぽつと暗い一本道を歩いていると、段々と細くなっていく道に更に分かれ道が生まれてくる。分かれ道の先には人んちの灯りが漏れてるくらいなもので、暗い。その上夜で皆挙ってカーテンを閉めてるもんだから、さらに暗い。そういう所が田舎なんだろう。スマホをつけて時間を見ると意外と、思ったより遅い時刻となっていた。時刻を確認すると急に目蓋が重くなったような気がしてスマホの電気を消して前を向くと、ふと普段なら見ることの無い場所に目が向いた。
あいつは何してんだ。
自販機の明かりだけになった暗い歩道で見慣れた影と、知らない長い影が揺れていた。

多分それが同じ制服だったなら俺は通り過ぎていたかもしれない。だけど。
「あきら?」
リュックのベルトを緩く掴んだ手を取り無理に引っ張った。ゆなは大人しく俺に引かれる侭となっている。大人しく従順なこいつは何のことだかは分かっていることだろうけど。
最悪だろ。ナンパとか。
後ろを振り返るとさっきの男はもう見えなくなっていた。見慣れない格好。おっさんというには若い顔。変な奴じゃなくてよかった。視界から安心が広がり歩く速度を落ちるとゆなの手を繋ぐ余裕も出来てきた。
「ゆな」
「ん?」
さらりと黒髪が揺れて白い顔が露になった。何も気にしてなさそうな表情に此方が拍子抜けする。そうだ。これがこいつの怖いところなんだ。
「影山は?」
「もう家に着いてるんじゃない?私も一回帰ったし。私は卵買いに行こうとしてた」
「あ、そ……」
ゆなは無意識のうちに無償の愛情を求めている節がある。恋愛沙汰には疎く、自分をその対象として考えていないのに、だ。
誰かと付き合うというのならさして問題は無い。あるとすれば俺の精神衛生上良くないという事だけだし。その時俺はキチンと手を離す事が出来るかは別問題として。
問題は体を求められた時とかだ。コイツガード固そうな癖にチョロいからそこに変なのが漬け込みでもすればと思うとゾクリと背筋が寒くなる。
「おまえさ、変なのに引っかかんなよ」
「引っかかんないよ?」
嘘吐け。前髪の上からデコピンを一つかました。その額に口を付けるのは幼馴染がやってはいけないことだ。手を繋ぐのはいい。話すのもセーフ。外で抱き締めるのはグレーゾーン。お互いの家に行くのは幼馴染の特権。告白もキスもセックスも、アウト。幼馴染以上の感情なんてあったって無駄だ。
「コンビニしか開いてないよね」
「時間考えろよ」
「だって。卵食べたかったんだもん」
バーカ。
恋人繋ぎでもなんでもない幼い手の絡まり方に年期を感じた。さて、このコンビニまでの夜道を男女で、手を繋いで歩く俺達を世間はどう思うのか。それを教えてやる程優しくは無い。


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