個性の変化?
沙保の得意な事は、出来ることを模索すること。つまり努力であった。
臥薪嘗胆。
辛酸を嘗め続けた幼少期を糧に、彼女はヒーローになる為に自分の個性を最大限に使い、尚かつ強く在ることを模索し続けたのである。
それ故に彼女は身体能力も高く、難しい個性も使いこなす事が出来たのであった。
そうはいってもそれは個性を使ったものには及ばない。例えば幅跳び、握力、そしてハンドボール投げ等である。
だが、彼女の預かりしれない所で事態は動き出していた。
「擦無さん凄いね!」
「いや……」
そのハンドボール投げで尋常ならざる記録が出たのである。
彼女の個性は無効化である。それを知っているのは出久、爆豪、そして担任である相澤であった。
三者は其々が疑問を抱いた。勿論それは本人もそうである。
だが出久がハンドボール投げで指の骨を粉々にしてしまった為それにどうも気を取られ、沙保も勝己も先程沙保に起こったことなどすっぽ抜けてしまったのだ。
「いっくん、指……」
「へ、いき……だよ!まだやれる」
「そ、う……?」
お茶子、飯田と一緒に出久の周りに集まる沙保に、そして出久に不満気な目を向けて勝己は思案した。
そして最下位が除籍されるという話が嘘だと言われ、成績一覧が表示された時に沙保はアッと声を上げそうになった。∞を出したお茶子より少し下のその順位はあのハンドボール投げの為であった。
その後出久には保健室利用の紙を貰った。除籍の話も無くなり出久は安心しきったのか先程よりも激しい痛みを感じていた。
一方で沙保はやはり納得はいっていなかった。なにか不思議な力が働いたような、あの感覚をどうも忘れられないでいる。
そして彼女は相澤を訪ね、職員室へ行った。

「さっき……私のハンドボール投げで、何か起こったりしていませんか?」
相澤は首を傾げた。
「……いや。何も感じなかったが。……何か感じたのか?」
「まぁ、いや……私の個性は無効化です。それなのにあんな記録が出たので……」
無効化は対個性でなければなんの役にも立たない、つまり個性さえ消せなければ無個性と同等である。勿論の事ながら肉体強化は望めない。
だが、あの時確かに何かが変わったのだ。そしてあの記録が出た。
相澤は沙保の様子を見ながら思案し、口を開いた。
「擦無の個性は本当は無効化では無いという可能性もあるな。そこは追々見つけていく事にすればいい。今出来ることをやれ」
「……それしかないですよね」
何処か釈然としない様子で沙保は教室に帰っていった。
一方で相澤は思案する。
彼女の個性の考えうる本質と、その隠れていた理由とを。そして、また一つ違う種類の要因。
前者ならばいい。だが後者なら。
その時相澤の脳裏に一つの可能性が浮かんだ。
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