再会、再開
そして月日は流れ、高校入試のシーズンとなった。
阿鼻叫喚の巷と化した試験会場で沙保も難関と名高い雄英の筆記を自己採点とはいえまぁまぁの出来でクリアし、後は実技を残すだけとなった。
実技。
沙保は中学の三年間、その事をずっと考え、考えに考えた末の打開策を生み出せなかった。対発動系個性にしか使えない自分の個性。それだけじゃなく戦える何か。武術の類、武器など色んな事は試したけれども。どれもしっくりこないのである。
方向性さえも掴めないままこの日を迎えることとなったのだ。
実技は持ち込み自由である。あらゆる場合を想定した沙保はバールや工具の箱を大きなリュックに詰め込んだ。ガチャガチャと大きな音を立てる沙保に周りは振り返ったが、沙保はムッツリと黙りこみ、刺さる視線に膨れていた。
そんな沙保の視界に黒いもさもさ頭が入り込む。三年間見てない変わらぬ後ろ姿に沙保の表情が柔らかなものに変化していった。
「いっくん」
「沙保ちゃん!?」
出久は可哀想な程に飛び上がった。
お茶子と話したという事もあるが、約三年ぶりの再会に感動したのかプルプルと震える手を顔の両側に上げるという意味不明なポーズを取る出久の手に、沙保はハイタッチをするように手を重ねる。
「やっぱり!!来てるって信じてた」
「っ沙保ちゃん……っ」
今度こそ出久は感涙した。沙保は云わば出久にとって同士であり唯一といっていいほどの自分を認めてくれる友達であったのだ。涙を流す出久に驚く事なく沙保はキュッと出久の随分硬くなった指先を握った。
「お互い頑張ろうね。一緒にここ、受かろ」
「っうん!!」
受験番号の離れている二人は手を振って別れた。
そして自分の番号の席へ向かう途中に沙保は通路を歩く勝己を見つけた。また、勝己も赤い目で沙保を睨みつける。
二人は通路の隅で立ち止まり、ほぼ無意識の内に睨み合っていた。そのただならぬ様子に人は迷惑そうにしながらも自然と避けていく。試験まで時間はまだたっぷりあった。
「……やっぱり来てたんだ」
心底嫌そうに沙保が口を開く。勝己は舌打ちで返した。
「…………何でテメェがいんだよ」
「私がここ受けるから。あんたも受けるからここに居るんでしょ」
「テメェといいデクといい……」
忌々しそうに勝己は再度舌打ちをする。それに反応した沙保の眉間の皺が一層深く刻まれた。
「何で私が受けちゃダメなの?」
受けることが、さも当然の様な口振りの沙保に逆に勝己の眉間の皺が深くなる。
何故?
そんなの決まっている。

「没個性だからだろ。お前なんかがヒーローになれる訳がない」

勝己は信じて止まない言葉を呟くように言った。沙保はその言葉に反論しようとしたが、一瞬目を反らし、目を瞑った。
「あっそ」
沙保は踵を返し、勝己に背を向けた。揺れる髪に勝己は何故か呆然と視線を向けていた。
あの日焼き切れた痕も見せず、彼女の髪は以前より少し長くなって肩の下で緩く舞っていた。
prev / / next
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -